2017年12月28日木曜日

縄文時代史 勅使河原彰 2016 Ⅰ縄文文化の誕生

縄文時代史 1

1 はじめに
書店の書棚で偶然見つけてこの図書を購入しました。

縄文時代史 勅使河原彰 2016 新泉社

自分が知りたいと思っている疑問をいろいろな図書で調べたり、WEBで調べてもなかなか思い通りの答えが返ってこないことがあります。
ところが、この図書はそのような疑問に単刀直入に答えてくれる場面が多く、驚いています。
久しぶりに即戦力になる図書を入手できたという感想を持ちました。

この図書は次のような目次構成となっていますので、章ごとに自分にとって有益であると感じた情報を抜き書きしてメモすることにします。

縄文時代史(勅使河原彰、2016、新泉社) 主要目次
Ⅰ 縄文文化の誕生
Ⅱ 縄文人の生活と生業
Ⅲ 縄文人の社会
Ⅳ 縄文文化の発展と限界
Ⅴ 縄文から弥生へ

2 「Ⅰ 縄文文化の誕生」
2-1 旧石器時代末頃の気候変動グラフ
次の気候変動グラフはこれまで見かけたことのないグラフで興味を引きます。

晩氷期の気候変動
縄文時代史(勅使河原彰、2016、新泉社)から引用

出典はなく著者作成となっています。
文章を読むとグリーンランド氷床研究の成果のようです。
1万5千年前から1万1500年前の気候は短期間に寒・暖がおこり、最後は50年で気温が摂氏7度上昇し完新世の温暖期に入るという激しい変化があったことが述べられています。
このような具体的情報に触れたのは初めてであり、出典を是非とも調べたくなりました。
また考古の興味とは別ですが、現在の地球温暖化問題を考える時に知っておくべき知識であると感じました。

この気候変動グラフを軸に考古知識を投影した次の図は圧巻です。

旧石器時代末から縄文時代初頭の発達の諸段階
縄文時代史(勅使河原彰、2016、新泉社)から引用

この図により旧石器時代と縄文時代の連続を気候変動との関連で切れ目なく理解することができます。情報の模式的図式化が美しすぎるほどです。
なお著者は縄文時代草創期を旧石器時代に含めて理解することがふさわしいと考えています。

2-2 縄文時代の較正年代
縄文時代の暦年較正した較正年代が掲載されていて、自分の頭の中に構築すべき年表に役立ちそうです。

放射性炭素年代とその較正年代の比較
縄文時代史(勅使河原彰、2016、新泉社)から引用

2-3 狩猟具の変遷
有茎尖頭器が投げ槍の穂先であると考え、また投げ槍のイラストでアトラトル(投槍器)を描くことに推論の大胆さ(自信の深さ)を感じました。

狩猟具の変遷
縄文時代史(勅使河原彰、2016、新泉社)から引用

2-4 西アジアと日本列島の編年比較
次の表から日本列島縄文時代の文明は、土器発生は古いけれども、西アジアの文明発展と比べて長い間停滞しているように観察できます。

西アジアと日本列島の編年比較
縄文時代史(勅使河原彰、2016、新泉社)から引用

西アジアで青銅器・鉄器時代であったころ日本列島は相変わらず縄文時代であったという特性の理由についてはジャレド・ダイアモンドの著作(「銃・病原菌・鉄」など)を学習することによって検討できそうです。





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