2022年6月17日金曜日

ツタンカーメン黄金のマスク

 TV番組「ツタンカーメン」学習 4

(2022.05.04放送のNHKBS番組「英雄たちの選択スペシャル ツタンカーメン 秘宝に隠された真実」を材料に学習シリーズ記事を書いています。)


Tutankhamen Golden Mask


I learned that Tutankhamen's golden mask was made for resurrection and regeneration. I also enjoyed collecting stamps of the design.


ツタンカーメン黄金のマスクが復活再生のためにつくられたことを学習しました。またその図案の切手を収集して楽しみました。

1 ツタンカーメン黄金のマスク

番組ではツタンカーメン黄金のマスクについて次のような興味ある視点からの説明・発言がありました。


ツタンカーメン黄金のマスク 番組画面


ツタンカーメン黄金のマスク 番組画面

ア 技術的などの説明

・顔面はホワイトゴールド(銀との合金で白っぽく輝く)、それ以外は純金を使い、また遠方から運ばれてきた珍しい宝石・鉱物をちりばめて豪華につくってある。

・金は錆びることのない金属で、神々の体も金でできていると信じられていたほど価値が高かった。

・貢物として各地から金を運ばれてくる様子が壁画に描かれている。

イ 祭祀的などの説明

・価値高い黄金のマスクをつくる事によって、復活再生を容易にしようとした。現世の価値観を祭祀面にも持ち込んだ。

・死に対する恐怖心を豪華なものでカバーしようとした。死の恐怖を克服する技術として黄金のマスクをつくり、あの世でも通用すると考えた。

・豪華なもので遺体を包むと再生できるという考えは世界各地にある。

2 黄金のマスクの上に残っていた生花

番組では100年まえの発掘時に、黄金のマスクの上に妻アンケセナーメンが手向けたと考えられる生花(ドライフラワーとなって残存しているもの)が残っていたことが紹介されました。驚くべき事実です。


黄金のマスクの上の生花 番組画面


黄金のマスクの上の生花 番組画面

次の写真はエジプト考古学博物館で実際に見た、ツタンカーメン王墓から出土した植物(ドライフラワー)です。日本でいえば縄文時代晩期初め頃にあたりますが、その時代のドライフラワーが多量に出土するのですから驚きです。


ツタンカーメン王墓から出土したドライフラワー (エジプト考古学博物館 2018年撮影)

3 ツタンカーメン黄金のマスク切手

ツタンカーメン黄金のマスクが図柄となっている切手を考古学切手コレクションの一環として収集して楽しんでいます。


ツタンカーメン黄金のマスク ハンガリー切手 発掘100周年記念


ツタンカーメン黄金のマスク 中国切手 エジプトと中国で同図案切手を発行


ツタンカーメン黄金のマスク エジプト切手


ツタンカーメン黄金のマスク エジプト切手

4 感想

エジプト旅行で黄金のマスクもツタンカーメンの墓とそこに安置されているツタンカーメンミイラも観覧したのですが、双方ともに撮影禁止であり、結果として記録が残っていないのは残念です。


ツタンカーメン王墓前のガイド説明風景

黄金のマスクは復活再生のためにつくられたということ、そしてそのような考えは世界各地にあるという説明は縄文時代学習でも着目すべき考えであると感じました。精緻な文様の縄文土器を時間と手間をかけてつくり、その土器を死者のためにつかったとしたら、その土器は古代エジプトの金に相当する意義があるのではないだろうかと想像します。


2022年5月17日火曜日

アクエンアテンとアテン神信仰

 TV番組「ツタンカーメン」学習 4

(2022.05.04放送のNHKBS番組「英雄たちの選択スペシャル ツタンカーメン 秘宝に隠された真実」を材料に学習シリーズ記事を書いています。)


Akhenaten and Aten God Faith


I enjoyed Egyptian stamps with the design of Akhenaten, the father of Tutankhamen, the predecessor king, and the spread of the world's oldest monotheistic Aten god.


1 アクエンアテンの一神教

ツタンカーメンの父親で先代王であるアクエンアテンはアテン神信仰だけを認める一神教宗教改革を断行しました。アクエンアテンは既存神官層から恨まれ、死後の王棺のカルトゥーシュが削除され、顔が削られたほどです。


アクエンアテン王棺の削られたカルトゥーシュ TV画面


アクエンアテン王棺の削られた顔面 TV画面

2 アクエンアテンのアテン神信仰

アクエンアテンのアテン神信仰は世界で最古の一神教宗教であり、その実態について今後学習を深めることにします。アテン神は円形太陽と多数の光線(光線の先には手)からなる図像で表現されます。他の多神教の神々のようにフィギュアになることはなく、平面にのみレリーフで描かれます。


アクエンアテンと妻ネフェルティティと3人の娘のレリーフ エジプト切手 1994年発行


参考 原レリーフ Wikipediaアメンホテプ4世(英語版)から引用

アクエンアテンとネフェルティティの間には6人の女の子が生まれ、このレリーフには3人の女の子が生まれた時の様子が描かれていると言われています。ツタンカーメンの妻はアクエンアテンとネフェルティティの3女であると言われていて、そうだとすればネフェルティティに抱かれている女の子が該当するようです。


アクエンアテンとアテン神図像 エジプト切手


アクエンアテン像 エジプト切手 1977年発行


参考 アクエンアテン像


アテン神デザイン切手 エジプト切手 1986年発行

3 気になる情報

「唯一神起源説

ジークムント・フロイトは、アクエンアテンの治世年と出エジプトの年と推定される年代がほぼ同じである事を根拠に、アテン神が同じ唯一神教であるユダヤ教の神ヤーウェの原形とする説[12]を唱えた。アテンがヘブライ語の主(アディン)と類似するなどの根拠をあげている。」(Wikipediaアテンから引用)

この学説が今でも生きているのかどうか知りたくなり、学習を深めることにします。


ツタンカーメンの黄金玉座 2

  TV番組「ツタンカーメン」学習 3

(2022.05.04放送のNHKBS番組「英雄たちの選択スペシャル ツタンカーメン 秘宝に隠された真実」を材料に学習シリーズ記事を書いています。)


Golden Throne of Tutankhamen 2


There are two cartouches that represent the king's name on the golden throne of Tutankhamen. After the resurrection of polytheism, Tutankhamen seems to have worshiped not only Amen but also Aten.


1 ツタンカーメンの2つのカルトゥーシュ

番組ではツタンカーメンの黄金の玉座にツタンカーメンの2つの王名刻印(カルトゥーシュ)があることを示して、何故2つの王名が刻まれているのかという問題意識を提示しています。この問題意識を軸に番組全体を展開しています。

2つの王名とはツタンカーメンとツタンカーテンです。


ツタンカーメンとツタンカーテンのカルトゥーシュが刻まれている様子を示す番組画面

ツタンカーテンとは唯一神アテン信仰のもとにおける「アテン神の生ける似姿」という意味です。

ツタンカーメンとは伝統的な多神教世界におけるテーベ守護神アメン神信仰のもとにおける「アメン神の生ける似姿」という意味です。

番組ではツタンカーメンの父親で前代王アクエンアテンの多神教(アメン神など)から一神教(アテン神)への宗教改革とそれによりアクエンアテンがアメン神神官と一般民衆の恨みを買った様子が説明されます。

恨みを買ったアクエンアテン死後に王位を若くして継いだツタンカーメンは一神教(アテン神信仰)をアメン神を含む多神信仰(3神国家信仰)に戻すことが説明されます。

このような状況の中で、この王座は唯一神アテン神信仰と多神教のひとつであるアメン神信仰の両方が表現される王座として興味が持たれています。

番組ではツタンカーメンがアテン神の信仰を持ちながら3神(アメン神、ラー・ホルアクティ神、プタハ神)を国家神とする第3の選択をした様子を説明し、単純な多神教世界に戻ったのではないと説明しています。

2つの王名カルトゥーシュの刻印位置は次のように説明されています。


カルトゥーシュ「ツタンカーメン」TV画面説明


自分が撮影した写真での確認

なお、カルトゥーシュ「ツタンカーメン」の右のカルトゥーシュは番組でも紹介されたツタンカーメンがファラオに即位したときの名前「ネブケペルウラー」です。


ツタンカーメンがファラオに即位したときの名前

玉座背もたれにはカルトゥーシュ「ツタンカーメン」と「ネブケペルウラー」が並んで刻まれていて、これがファラオツタンカーメンのメインカルトゥーシュであることは明らかです。


カルトゥーシュ「ツタンカーテン」TV画面説明


自分が撮影した写真での確認

カルトゥーシュ「ツタンカーテン」は玉座背後の右側枠に刻まれています。カルトゥーシュ「ツタンカーメン」と比べてランクが低い表現であることは明白です。

2 アテン神図像

王と王妃の背景にアテン神の表現である円盤状太陽とそこから放たれる多数光線が描かれ、光線の先端は手になっています。さらにその手をよく見ると、王と王妃のそばにアンク(生命の象徴鍵)を握っていて、2人に永遠の生命を届けているように見ることができます。


王と王妃にアテン神がアンク(永遠の生命の鍵)を届けている様子

ツタンカーメンは多神教信仰復活(3神の国家神としての信仰)を宣言し実行していますが、この黄金の玉座は一神教であるアテン神の図像を正面に据えています。その理由として、この玉座は多神教信仰復活宣言以前に制作されたものだと言われています。しかし、この番組説明のようにツタンカーメン自らはアテン神を信仰していたのかもしれません。父親である先代王のアクエンアテンの王権を継承しているという正統性をわざと表現するためにアテン神を描いたと想像します。

2022年5月7日土曜日

ツタンカーメン王の黄金の玉座

 TV番組「ツタンカーメン」学習 2

(2022.05.04放送のNHKBS番組「英雄たちの選択スペシャル ツタンカーメン 秘宝に隠された真実」を材料に学習シリーズ記事を書いています。)


King Tutankhamun's Golden Throne


Looking back on the actual viewing of the Tutankhamen Golden Throne, I enjoyed the stamp design and observed it in detail with detailed photograph.


番組ではツタンカーメン王墓から出土した幾つかの秘宝が紹介されましたが、その内の1つが黄金の玉座です。


番組画面 ツタンカーメン王の黄金の玉座

2018年2月1日にエジプト考古学博物館でこの現物を観覧しました。


ツタンカーメン王の黄金の玉座

黄金の玉座は観覧者で混雑していて、撮影環境は劣悪でした。しかし現物を自分の眼で見たという体験は今となっては自分にとっては大変貴重なものです。もしもう一度エジプトに出かけることができれば大エジプト博物館でこの玉座をもう少しじっくり観覧して、よりましな写真を撮影したいものです。チャンスがあれば3Dモデル作成用撮影もチャレンジしたいものです。

この黄金の玉座は収集した考古学切手の中に2点ありました。


エジプト(アラブ連合)ユネスコ発行切手 1967年

使用済み切手という単なる古い紙片です。しかし、この古い紙片を所有することによって黄金の玉座という考古情報と自分が少しだけつながりが持てたという気持ちになるので不思議です。玉座背の黄金と宝石で描かれた王と王妃の絵が図案になっています。図案切り出し窓はツタンカーメン黄金のマスク正面形状をデフォルメして模しているようです。切手全体の金色(印刷は黄色)とブルーの色調対比も、黄金のマスク頭巾の色調対比を模しているようです。


エジプト切手 1997年 発掘75周年記念

目打ちがない切手です。

図書「TUTANKHAMEN」(BONECHI)にはこの黄金の玉座の精細な写真が掲載されています。


黄金の玉座の絵画 「TUTANKHAMEN」(BONECHI)から引用

ツタンカーメン王が玉座に座り、王妃アンケセナーメンが王に香油を塗っている情景です。頭上には円盤と光線で表現される太陽神アテンが描かれていて、光線の末端は全て小さな手となり、王と王妃に生きる力を与えています。一足のサンダルの片方を王が左足に、王妃が右足に履いていて、仲睦まじい姿が信じがたいほどであるという表現になっています。

番組では司会者と出演者の間の会話で「王が満足した状態であることを視覚化することによって民衆も安心した。」旨の出土物全体に対する意義が述べられていました。

なお、太陽神アテンはツタンカーメンの父親である前王アクエンアテンが宗教改革で唯一神にしたものです。唯一神に指定することによってアクエンアテンは多神教神官から恨みを買い、アクエンアテン死後は再び多神教に戻りました。この玉座には太陽神アテンが描かれているのでまだアクエンアテンの影響が残っている時期につくられたようです。


TV番組「英雄たちの選択スペシャル ツタンカーメン 秘宝に隠された真実」の学習開始

TV番組「ツタンカーメン」学習 1


Start learning the TV program "Heroes' Choice Special Tutankhamen: The Truth Hidden in the Hidden Treasure"

Learning TV program "Tutankhamen" 1


On May 4, 2022, the program "Heroes' Choice Special Tutankhamen: The Truth Hidden in the Hidden Treasure" (1 hour and a half) was broadcast on NHK BS. It was an interesting program, so I decided to watch it, record it, and study it carefully. I would like to enjoy this TV program.


2022年5月4日NHKBSで番組「英雄たちの選択スペシャル ツタンカーメン 秘宝に隠された真実」(1時間半)が放送されました。興味のある番組でしたので、視聴するとともに録画を撮り、じっくり学習することにしました。これまで図書をじっくり学習してブログ記事をシリーズで書いたことはあります。しかしTV番組を種に学習したことはありません。初めての学習活動ですので、いかに学習を楽しむかという観点で取組み、このTV番組を楽しみ倒したいと思います。


番組の表紙的画面 1


番組の表紙的画面 2

1 興味をそそる番組導入

今年(2022年)は20世紀最大の考古学的発見と言われるツタンカーメン王墓発掘100周年です。1922年11月にハワード・カーターによってツタンカーメン王墓がエジプト王家の谷で発見されました。この番組は100周年を記念して作成されたようです。

「黄金に輝く秘宝の数々から古代エジプトの王・ツタンカーメンの真実に迫る特別編!莫大な富と権力。謎多き死の真相。黄金のマスクの秘密。ツタンカーメンの神秘とロマン!

今年は古代エジプト・ツタンカーメン王の墓が発見されてちょうど100年。番組では8K超高精細カメラで撮影した秘宝の数々からツタンカーメンの実像を徹底解剖!そのばく大な富と権力、意外な日常生活とは?父の改革で国が混乱する中で即位した王は、いかにして国を立て直したのか?そして多くの謎に包まれた死の真相とは?ハイテクを駆使した黄金のマスクの秘密。黄金に輝く数々の宝が物語る、ツタンカーメンの神秘とロマン!」番組概要(NHKサイト「英雄たちの選択」から引用)


NHKサイト「英雄たちの選択」画面

番組導入で司会の磯田道史(国際日本文化センター教授)さんから次のような興味をそそるコメントがありました。


番組画面 ツタンカーメンが生きたのは日本の縄文時代の終り頃


番組画面 巨木の文化 石の文化

あくまでもツタンカーメンを縄文時代日本の「巨木の文化」と対比させて「石の文化」と捉え、縄文時代認識を相対化して縄文時代をグローバルな視点から見てやろうという意欲が感じられました。番組ではこの導入以外で縄文時代への言及は一切ありません。しかし、ツタンカーメンあるいはエジプト文明を観察する視点(特に縄文時代学習をしている自分がもつべき視点)としてとても重要であると感じました。

2 学習方法

図書の学習ではそこに書かれている文章を詳しく読んで論理展開を「解読」して、その感想等をメモすることになります。しかしTV番組の場合、提供される情報は主に画像です。ナレーションによる論理展開自体は詳しく分析する対象としてはふさわしくないような気がします。そこで今回の学習は次のような方法を取り、楽しみを増幅させながら学習を行うことにします。

ア 番組で紹介される遺構や遺物観察の追体験

番組で紹介されるツタンカーメン王墓や主な出土品は自分個人の2018年1月エジプト旅行で観察したものが多いです。王家の墓であるいはエジプト考古学博物館で実縁を観察しています。そこで、4年前の観察を撮影写真等で追体験して楽しむことにします。4年前の撮影写真をブログ記事に掲載して楽しむことにします。

イ エジプト考古学博物館で入手した図書「TUTANKHAMEN」(BONECHI)の学習

エジプト考古学博物館で入手した図書「TUTANKHAMEN」(BONECHI)には遺物等の精細なカラー写真が多数掲載されています。この資料を活用して学習を進めたいと思います。


図書「TUTANKHAMEN」(BONECHI)

ウ 考古学切手コレクションの活用

昨夏から考古学切手コレクションを趣味活動に加えましたが、エジプト切手は考古学切手の宝庫です。このコレクションを学習に活用して、学習の楽しみを倍化させることにします。

エ 図書「河合望(1921):古代エジプト全史」の活用

番組で登場する考古学者河合望さんの著書「古代エジプト全史」(kindle版)を学習に活用することにします。


河合望著「古代エジプト全史」(kindle版)

同時にこの図書には「河合望著「古代エジプト全史」刊行記念特設web」サイトがあり、そちらも情報満載です。この特設サイトも大いに学習に活用することにします。


「河合望著「古代エジプト全史」刊行記念特設web」サイト

もちろんのことですが、この図書以外の手持ちエジプト関連図書も大いに参照することは当然です。

オ web情報の活用

webからツタンカーメンやエジプト関連情報を大いに収集して学習に活用することにします。

カ Sketchfab及びScan The Worldの活用

Sketchfabにはツタンカーメンやエジプト関連地物の3Dモデルが多数掲載されています。学術的価値の少ない模造物が多いですが、なかには3D空間で地物の確認に役立つ場合があります。

Scan The Worldはエジプト関連地物(現物)の3Dモデルが掲載されています。

これらの情報を活用して学習を深めることとします。

3 学習の進め方

当面はTV画面に登場した遺物について、ア・イ・ウなどの方法で画像を楽しみ、画像から読み取れる情報をメモすることにします。遺物学習が一段落した後に、番組で述べられた司会者や登場者の発言を一つのきっかけとして自分自身の興味テーマを設定して学習をさらに進めることにします。

なお、自分が興味を持っている3Dモデル化技術とツタンカーメン遺物との間を何らかの方法で関連付けたいと考えています。縄文土器のようにツタンカーメン遺物を自分撮影写真によるフォトグラメトリーで3Dモデルにする条件は現状ではゼロです。しかし別の方法を使えば可能性があります。学習の中でその技術も検討することにします。


2022年1月24日月曜日

「シルクロード1万5000キロを往く」読前感想

 Impressions before reading the book "Going 15,000 km on Silk Road"


The book "Going 15,000 km on Silk Road" (Kokon Shoin, 2021) was given by the author, Keiji Nakaie. I have a strong interest in the geography, terrain, and archaeological sites of the Taklamakan Desert and its surroundings, so I haven't read all of them yet, but I wrote down my interests as a pre-reading impression.


今村遼平・中家惠二・上野将司編著「シルクロード1万5000キロを往く(上、下)」(古今書院、2021)を編著者の中家惠二さんからいただきました。その内容に強い興味を持ちましたので、まだ全部読んでいませんが、自分の興味を読前感想としてメモします。

1 図書の概要

この図書は、著者達がタクマラカン砂漠を中心に展開される陸のシルクロードを全て旅してみたいと思い、それを実現させ、その記録をまとめたものです。著者達のグループは地形・地質を主な業とする人々であり、歴史文化の体験のみならず、砂漠や山岳の専門的立場からの体験も随所で書かれています。2011年~2018年までの4回の旅行について月刊「地理」(古今書院)に連載してきたものをまとめたものです。


表紙

図書の構成

上巻…第Ⅰ編天山南路、第Ⅱ編天山北路

下巻…第Ⅲ編西城南道、第Ⅳ編河西回廊


旅行ルート図

2 感想

2-1 自分もいつか行ってみたい

このグループはタクマラカン砂漠周辺の新疆ウィグル自治区を縦横無尽に旅行しています。私もとても興味のある土地であり、ぜひとも旅行したいと思っていたのですがこれまで実現出来ませんでした。うらやましい限りです。パンデミックが終わり、海外旅行が自由になったあかつきにはぜひとも行ってみたいと思います。

その時のために、この旅行記を読み返し、事前勉強を楽しむことにします。

タクマラカン砂漠周辺の新疆ウィグル自治区の土地ついて、これまで次のようなブログ記事を書いています。

天山山脈の氷河


キルギスとの国境付近の天山山脈氷河(サマルカンドへ向かう機中から)

南西タクマラカン砂漠

ロプノール

タクマラカン砂漠

Bogda Mountains China

Colorful Faults of Xinjiang China

天山山脈の空 2

天山山脈の空

なお、タクマラカン砂漠や新疆ウィグル自治区には行ったことはないのですが、隣国といってもよい近隣のウズベキスタンには夫婦で旅行したことがあります。サマルカンドやブハラ、さらに砂漠を越えてヒヴァなどを訪問し、歴史文化と人情、砂漠に接し「シルクロード1万5000キロを往く(上、下)」で書かれている内容と類似した体験をしています。その体験から、タクマラカン砂漠と新疆ウィグル自治区に対する思いは強くなっています。

2-2 ニヤ遺跡の思い出

「シルクロード1万5000キロを往く(下)」の第Ⅲ編西域南道の「10且末(チャルチャン)から和田(ホータン)へ」で尼雅(ニヤ)河を渡ることとか、民豊(ニヤ)で昼食を食べたことが書かれています。このグループは行っていませんが、このニヤ河の下流(砂漠の中)にニヤ遺跡があります。ニヤ遺跡は行ったこともないのにとてもなつかしい場所です。


ニヤ遺跡の様子 スタイン発掘地点 「北支・満蒙の地理」(保柳睦美、復刻図書[大空社])から引用


Niya site where Aurel Stein found wooden tablets

Niya ruins Wikipedia(英語版)から引用

(ちなみに、上の2枚の写真は同一サイトのようです。)

大学時代、教養の「人文地理学」という講座で保柳睦美教授が、ご自身が参加した戦前の国策タクマラカン砂漠探検調査の話をされ、その中でニヤ遺跡について詳しく話されたことを鮮明におぼえています。とても興味を持ちました。その講義で保柳睦美教授はご自身で上記スタイン発掘地点写真付近のニヤ遺跡情景を手書き絵画で大判ポスターに仕上げ大教室に掲示されて、とても迫力があるものでした。現場を見た人間が手書きした絵であり、強く印象に残りました。

その後20年以上たって、佐原市にある伊能忠敬博物館(まだボロボロの小さい建物だった頃、今は伊能忠敬記念館で立派な建物)を家族で訪ねた時、廊下にこのこの保柳睦美教授が書かれたニヤ遺跡手書き絵画が無造作に置かれていました。大学出てから20年近く経って、再びニヤ遺跡手書き絵画を偶然見れて興奮したことを思い出します。(今からいえば30年以上前のことです。)多分、保柳睦美教授は地理学者ですから、国土地理院の地理学関係者とつながりがあり、国土地理院地理学関係者は地図で伊能忠敬博物館とつながりがあり、そうした人脈でニヤ遺跡を含む学習教材が保管場所を求めて移動したのだと思います。

ニヤ遺跡に行ってみたいものです。しかし、Google earth proで観察するとスタインや保柳睦美教授が探検した時と同じようにまだ遺跡が野ざらしで発掘されていません。「シルクロード1万5000キロを往く(下)」の尼雅(ニヤ)河渡河前の記述では発掘されていない遺跡に近づくと厳しく写真撮影が禁止される様子が書かれています。現地に行ってみなければ判りませんが、観光的には現場に往けないかもしれません。

なお、保柳睦美教授のタクマラカン砂漠探検調査は次の図書にまとめられています。


保柳睦美著「北支・蒙古の地理」左復刻版表紙(大空社)、右原本(古今書院、昭和17年)

この図書再読も「シルクロード1万5000キロを往く(上、下)」読書と一緒に行うことにします。

保柳睦美教授が参加したタクマラカン砂漠探検調査には若き考古学者和島誠一さんも参加されています。

2-3 感謝

中家惠二さんとは日本最初の応用地理の建設コンサルタント会社である「株式会社地域開発コンサルタンツ」でご一緒したことがあります。また筆頭編著者である今村遼平さんもその頃別会社とはいえ同じフロアで間仕切りもない場所にいて、いろいろとご指導していただいたことを思い出します。この素晴らしい本をきっかけにしてタクマラカン砂漠や新疆ウィグル自治区に対する興味と学習を深めるきっかけが生まれました。中家惠二さんと編著者の皆さまに感謝します。