2022年5月17日火曜日

ツタンカーメンの黄金玉座 2

  TV番組「ツタンカーメン」学習 3

(2022.05.04放送のNHKBS番組「英雄たちの選択スペシャル ツタンカーメン 秘宝に隠された真実」を材料に学習シリーズ記事を書いています。)


Golden Throne of Tutankhamen 2


There are two cartouches that represent the king's name on the golden throne of Tutankhamen. After the resurrection of polytheism, Tutankhamen seems to have worshiped not only Amen but also Aten.


1 ツタンカーメンの2つのカルトゥーシュ

番組ではツタンカーメンの黄金の玉座にツタンカーメンの2つの王名刻印(カルトゥーシュ)があることを示して、何故2つの王名が刻まれているのかという問題意識を提示しています。この問題意識を軸に番組全体を展開しています。

2つの王名とはツタンカーメンとツタンカーテンです。


ツタンカーメンとツタンカーテンのカルトゥーシュが刻まれている様子を示す番組画面

ツタンカーテンとは唯一神アテン信仰のもとにおける「アテン神の生ける似姿」という意味です。

ツタンカーメンとは伝統的な多神教世界におけるテーベ守護神アメン神信仰のもとにおける「アメン神の生ける似姿」という意味です。

番組ではツタンカーメンの父親で前代王アクエンアテンの多神教(アメン神など)から一神教(アテン神)への宗教改革とそれによりアクエンアテンがアメン神神官と一般民衆の恨みを買った様子が説明されます。

恨みを買ったアクエンアテン死後に王位を若くして継いだツタンカーメンは一神教(アテン神信仰)をアメン神を含む多神信仰(3神国家信仰)に戻すことが説明されます。

このような状況の中で、この王座は唯一神アテン神信仰と多神教のひとつであるアメン神信仰の両方が表現される王座として興味が持たれています。

番組ではツタンカーメンがアテン神の信仰を持ちながら3神(アメン神、ラー・ホルアクティ神、プタハ神)を国家神とする第3の選択をした様子を説明し、単純な多神教世界に戻ったのではないと説明しています。

2つの王名カルトゥーシュの刻印位置は次のように説明されています。


カルトゥーシュ「ツタンカーメン」TV画面説明


自分が撮影した写真での確認

なお、カルトゥーシュ「ツタンカーメン」の右のカルトゥーシュは番組でも紹介されたツタンカーメンがファラオに即位したときの名前「ネブケペルウラー」です。


ツタンカーメンがファラオに即位したときの名前

玉座背もたれにはカルトゥーシュ「ツタンカーメン」と「ネブケペルウラー」が並んで刻まれていて、これがファラオツタンカーメンのメインカルトゥーシュであることは明らかです。


カルトゥーシュ「ツタンカーテン」TV画面説明


自分が撮影した写真での確認

カルトゥーシュ「ツタンカーテン」は玉座背後の右側枠に刻まれています。カルトゥーシュ「ツタンカーメン」と比べてランクが低い表現であることは明白です。

2 アテン神図像

王と王妃の背景にアテン神の表現である円盤状太陽とそこから放たれる多数光線が描かれ、光線の先端は手になっています。さらにその手をよく見ると、王と王妃のそばにアンク(生命の象徴鍵)を握っていて、2人に永遠の生命を届けているように見ることができます。


王と王妃にアテン神がアンク(永遠の生命の鍵)を届けている様子

ツタンカーメンは多神教信仰復活(3神の国家神としての信仰)を宣言し実行していますが、この黄金の玉座は一神教であるアテン神の図像を正面に据えています。その理由として、この玉座は多神教信仰復活宣言以前に制作されたものだと言われています。しかし、この番組説明のようにツタンカーメン自らはアテン神を信仰していたのかもしれません。父親である先代王のアクエンアテンの王権を継承しているという正統性をわざと表現するためにアテン神を描いたと想像します。

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