2021年12月14日火曜日

松木武彦「はじめての考古学」(ちくまプリマー新書)

 The First Archeology" by Takehiko Matsuki (Chikuma Primer New Book)


I read "The First Archeology" by Takehiko Matsuki (Chikuma Primer New Book) and made a note of the feeling after reading.

This book is full of the latest information on archeology, yet it is a simple narrative and very interesting to read. I read it all at once until the end.


用事で駅前にでかけて、ついでに本屋に入ると新書コーナーに松木武彦「はじめての考古学」(ちくまプリマー新書)が見えやすい場所に置いてありました。Twitter坂下貴則【日本人の考古学】さんが熱心に推薦していたことを思い出して早速購入しました。


松木武彦「はじめての考古学」(ちくまプリマー新書)表紙

そしてたまたま1泊2日の検査入院がありました。病院の暖かいベッドの上で、パソコンも携帯もテレビも電話もない理想環境のなかで、家族や知人がだれもいなく、かつ他にすることがない長時間を活用して、一気に松木武彦「はじめての考古学」(ちくまプリマー新書)を読んで、いろいろと興味のある事柄を見つけ出し備忘しました。

この記事では全体感想と縄文土器に関する感想をメモします。

1 目次と全体の感想

1-1 目次

第1章 考古学をはじめよう

第2章 人類はなぜ拡がっていったのか-ヒトの進化と旧石器時代

第3章 縄文土器が派手な理由-認知考古学で解く縄文時代

第4章 ヒト特有の戦うわけ-弥生時代と戦争の考古学

第5章 古墳は他の墓とどこが違うか-比較考古学でみる古墳時代

第6章 過去を知ること、いまを知ること-考古学と現代

1-2 全体感想

この図書は、著者が大学で遠隔式で講義した「日本考古学概論」1年間の資料を元にまとめたものです。

著者は一般大学生に対して考古学とはこのように面白く、役立ち、生きているという様子を全身で表現したのだと思います。この本を読む多くの人が考古学にたいして親しみを持つことになると想像します。また、今の今、躍動している考古学の様子を伝えています。

この図書で初めて知る最新情報や専門情報も多く、いろいろと深く考えさせられるのですが、同時に読んでいる時この図書から受ける印象はエッセーを読んでいるような平易さがあります。おそらく、著者は「体系的に考古学情報を整理してまとめる」というコンテンツづくり、コンテンツの切り売りをしているのではなく、自分が面白いと感じた実体験を自分の言葉で表現しているのだと思います。

2 縄文土器が派手な理由と認知考古学

2-1 記述

98~99ページ付近に「造形の秘密」と題した部分に、縄文土器の造形とデザインの中にあいまいさがあると指摘しています。わざと写実的に表現しないで、鳥のようにも見えるし、ヘビのようにもみえるし、ツルのようにも見えるものがあり、「何だろうか?」と見る人に考えさせていて、それはおそらく意図的にそうしたと指摘しています。


縄文土器の文様の展開

さらに細部を少しずつ変えた同じモチーフの文様が複数連続する例も、単なるコピーではなく、違いがあることに脳が反応し、何だろうかと考えさせていると指摘しています。

認知考古学の親理論の認知心理学では、このように「何だろうか」と考えさせることを「意味処理を活発化させる」と表現するそうです。

著者は縄文土器に盛り込まれた心理機能の中心は、意味処理を活発化させる働きであるとしています。

そして縄文土器の文様が縄文社会で共有されていた言語と世界観に根ざして何らかの意味を持っていた表象(心に思い浮かべることができるひとかたまりの概念やイメージ)の組合わせや順列を、個人の心に呼び起こすメディアだったことは間違いないとしています。

そして著者は、このような縄文土器を煮炊きで使うことによって、共通の表象の組合わせ順列を互いの心に共有し、確かめ合うことができ、複雑化する社会で、それを調整しまとめるためのメディアの一つとして利用されたと結論づけています。

2-2 感想

縄文土器文様の意義について、この図書の記述でより明解に理解できるようになったという印象をもちました。特に「何だろうかと考えさせることを意図している。」「共通の表象を共有確認するメディア」であるという指摘に深く共鳴します。

縄文土器の文様の意味について「何だろうか?」と考え、それが意味する表象について、当面空想を楽しみたいと思います。

認知考古学というものが存在していて、それが縄文土器文様の解読に関係しているらしいということをこの図書で知りました。この図書では土偶の心理実験を行い、中期土偶はプラス感情を得られるが後晩期土偶はマイナス感情になるという趣旨の研究を紹介しています。認知考古学という方法が新しい考古学的方法として発展する期待がもてるようです。今後学習を深めることにします。


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