2018年12月19日水曜日

土器発明の理由を因果律ではなく作用律から考える

「縄文はいつから!?」(小林謙一/工藤雄一郎/国立歴史民俗博物館編、新泉社) 11

「縄文はいつから!?」(小林謙一/工藤雄一郎/国立歴史民俗博物館編、新泉社)に収録されている「討論-縄文時代のはじまりをどうとらえるか-」の小項目「土器はどのように使われたか」を学習して、気が付いたことや感想をメモします。

1 土器発明動機に目的はなかった
・これまでの土器出現の説明「ドングリアク抜きとの関連」は最古土器発明段階(15000年前の氷期)でドングリがない環境であったことから否定される。
・ドングリアク抜きなどの特殊化された目的のために土器が出現したのではない。(ただし、後の温暖化した時代には土器利用はドングリアク抜きに大きく関連した。)
・土器が目的や用途として使われた事実と、それ以前に土器をつくろうと思った動機付けはイコールではない。1対1ではない。
・土器そのものが生み出される可能性として、粘土が可塑性に富んでいて、造形が容易だという、この性質に人間が気づいたことがひとつの大きな要素だと考える。
・土器そのものの必要性、用途や目的という因果律を検討することは重要だが、同時に作用律として、ヒトが粘土を自由に造形できる、そういうことが大きく関わっているのではないか。

粘土から土器へ
「縄文はいつから!?」(小林謙一/工藤雄一郎/国立歴史民俗博物館編、新泉社)から引用

土器制作と粘土細工
「縄文はいつから!?」(小林謙一/工藤雄一郎/国立歴史民俗博物館編、新泉社)から引用

2 感想
・最古の土器が15000年前でドングリが存在しない環境で生まれたことから、これまでの土器発明動機(ドングリアク抜き)は否定されます。
・因果律で説明するのではなく「作用律」で土器発明とその後の利用を考えるべきであるという考えがこの本で述べられています。随分と哲学的な思考をしていると感心します。しかし、苦肉の策であるような印象を受けます。
・15000年前になぜ「作用律」が発動して土器が発明されたのか、その時期がなぜ20000年前ではないのか、25000年前ではないのか説明が欲しくなります。
・土器発明動機としての「ドングリアク抜き」は否定されたのですが、15000年前頃の社会発展段階で液体保存機能や煮沸煮炊き機能に対するニーズが高まり、ついに土器が発明されたという因果律説明がどうしても欲しくなります。


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