2018年12月24日月曜日

遺跡の立地

「縄文はいつから!?」(小林謙一/工藤雄一郎/国立歴史民俗博物館編、新泉社) 12

「縄文はいつから!?」(小林謙一/工藤雄一郎/国立歴史民俗博物館編、新泉社)に収録されている「討論-縄文時代のはじまりをどうとらえるか-」の小項目「遺跡の立地」を学習して、気が付いたことや感想をメモします。

1 「遺跡の立地」の要旨
ア 会場質問「縄文草創期遺跡などは沖積地に埋没した場所もあるのではないか」…回答「旧石器時代遺跡や縄文草創期遺跡は沖積地の地中深いところなどに生活の痕跡があることは間違いないと考えるが、推測の手がかりはない。」

イ 縄文草創期隆線文土器の時期は平坦面の少ない丘陵地に遺跡が集中する。その場所は縄文早期罠猟(陥し穴、有舌尖頭器…仕掛弓)の場所と一致する。旧石器時代遺跡は平坦面を持つ相模野台地に多く、そこに縄文草創期隆線文土器の遺跡は少ない。
つまり縄文草創期隆線文土器遺跡と旧石器時代遺跡は異なる形で地形に対する選択性が強い。
縄文早期以降は多様な環境を幅広く利用するので地形選択性は弱くなる。
(関連遺跡分布地図を2018.10.31記事「関東南西部の縄文時代草創期の様相」に掲載)

2 考察
ア 沖積地埋没旧石器時代遺跡に関する考察はブログ花見川流域を歩く2017.01.17記事「興味を挑発する沖積地旧石器時代遺跡」などで繰り返し行ったことがあります。

イ 武蔵野台地・多摩丘陵・下末吉台地・相模野台地では旧石器時代遺跡、縄文草創期隆線文土器時代で地形に対して異なる選択性が強く働いています。
同様の遺跡分布地図を房総で作成すると旧石器時代遺跡と縄文草創期遺跡や早期罠猟(陥し穴、有舌尖頭器)の場所の地形選択性違いは武蔵野台地・多摩丘陵・下末吉台地・相模野台地と違った様相を呈しているように観察できます。

縄文時代草創期遺跡

縄文時代草創期遺跡と旧石器時代遺跡
草創期遺跡と旧石器時代遺跡の地形選択性が異なるとはこの地図からは観察できません。

縄文時代草創期遺跡と陥し穴
縄文時代草創期遺跡は陥し穴が密集する地形付近にあることは確認できます。

縄文時代草創期遺跡と有舌尖頭器出土遺跡
縄文時代草創期遺跡分布はなにか有舌尖頭器出土遺跡分布と似ているように観察できます。有舌尖頭器が仕掛弓罠猟を意味していて、それが谷密度の高い場所(地形が複雑に開析されている場所)に存在しているのだと気が付くと武蔵野台地・多摩丘陵・下末吉台地・相模野台地における研究結果と整合性が生れます。房総では一つの地形区(下総台地)に蔵野台地・多摩丘陵・下末吉台地・相模野台地にみられる多様な狩猟地形環境が全て備わっている可能性が考えられます。

縄文草創期遺跡と早期遺跡
縄文早期になると多様な地形環境を利用している様子がわかります。







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