設楽博己著「顔の考古学 異形の精神史」(2021、吉川弘文館)学習 9
この記事では設楽博己著「顔の考古学 異形の精神史」(2021、吉川弘文館)の「縄文土偶の顔」の「縄文人はなぜ巨大な耳飾りをつけたのか」を学習します。
1 縄文人はなぜ巨大な耳飾りをつけたのか
この章の結論は次の図にまとめられています。
土製耳飾りの構造
設楽博己著「顔の考古学 異形の精神史」(2021、吉川弘文館)から引用
土製耳飾について、以前学習しましたので、この章はそのまま丸ごと良く理解することができました。
2 以前に行った土製耳飾学習の反芻
2-1 耳朶輪に装着する耳飾の例
マサイ族女性
https://www.pinterest.jp/pin/796926096553960977/
マサイ族男性
https://www.pinterest.jp/pin/675821487826264685/
マサイ族例はいずれも観光客用に耳飾りを装着した写真のようです。
イアリング商品宣伝ページ
webを検索すると、耳たぶに穴をあけ、それを広げて、その穴にはめ込む耳飾商品の英語宣伝ページが多数あります。
2-2 装飾性の高い土製耳飾例
装飾性の高い土製耳飾例
縄文後期終末土製耳飾(千葉市内野第1遺跡)2点
右:番号34、最大長7.2㎝、最大幅5.6㎝、最大厚2.2㎝、重量40.2g、刻目列、刻目瘤
左:番号36、最大長7.0㎝、最大幅5.2㎝、最大厚2.1㎝、重量58.7g、刻目列、刻目瘤
撮影場所:千葉市埋蔵文化財調査センター
撮影月日:2020.08.20
ガラス面越し撮影
2-3 千葉市内野第1遺跡出土耳飾分析
以下はブログ「花見川流域を歩く」2020.09.15記事「内野第1遺跡土製耳飾の最大直径別出土数と装飾性との関係」の抜粋です。
ア 直径別装飾性分級
●最大直径1.0~3.4㎝(少年少女)
装飾性高…有文のもの
装飾性中…無文で中央部穿孔のあるもの
装飾性低…無紋で中央部穿孔のないもの
●最大直径3.5~5.9㎝(青年)
装飾性高…円形で全面有文のもの
装飾性中…環形で有文のもの
装飾性低…円形または環形で無文のもの
●最大直径6.0~8.4㎝(壮年熟年)
装飾性高…滑車形で有文のもの
装飾性中…環形で有文のもの
装飾性低…円形または環形で無文のもの
イ 最大直径区分別の装飾性
最大直径区分別(=世代区分別)の装飾性分級
最大直径区分別(=世代区分別)の装飾性分級(割合)
ウ 世代区分別に装飾性分級の割合が変化する理由
現時点では次のような状況を空想します。
【装飾性低装着の人々】
・装飾性低の耳飾を装着していた人々は社会下層に位置付けられていた。その社会位置を示すものとして装飾性低の耳飾装着を義務付けられていた。
・社会下層の人々はそれ以外の人々と比べ食糧事情など生活環境が劣悪であり、また危険や不衛生な仕事に携わる機会も多く死亡率が高かった。
・さらに犠牲(人身御供など)が必要な場合は社会下層の人々が主にその対象となった。
・したがって少年少女では装飾性低は一番割合が多いが、青年になると少なくなり、壮年熟年ではさらに割合が減少し、少年少女の半分近くになる。
【装飾性中装着の人々】
・装飾性中の耳飾を装着していた人々は社会の中核をなす人々つまり一般住民であり、その社会位置を示すものとして装飾性中の耳飾装着を義務付けられていた。
・装飾性低や高の耳飾を装着する人々(下層民、指導層)の死亡率が高いため、壮年熟年になると相対的に一般住民の割合が増える。
【装飾性高装着の人々】
・装飾性高の耳飾を装着していた人々は集落の中で高位的、指導的、祭祀執行的な立場にある上層民であり、一言で特徴づければシャーマンとその家族であった。シャーマンは装飾性高の耳飾装着が義務付けられていた。
・シャーマンは霊力を失ったときには殺されたりしたため寿命が短かった。そのため壮年熟年になるとその数が減少した。
3 感想
過去学習を今読み返してみると、まだ1年もたっていないのに、分析学習(的な空想)を大いに楽しんだ様子が思い出され、懐かしさをおぼえます
当時の学習では例えば次の文様の意味が判りませんでした。
後晩期土製耳飾(君津市三直貝塚)
加曽利貝塚博物館 ミニ企画展示「県内縄文遺跡展 -千葉県の縄文時代研究を彩った遺跡たち- 君津市三直貝塚編」で撮影
今思うに、これは玉抱三叉文そのものであり、全国展開している文様のようです。今後、耳飾文様の理解などの学習を深めると面白いようだと、設楽博己著「顔の考古学 異形の精神史」読書をきっかけに感じました。
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