設楽博己著「顔の考古学 異形の精神史」(2021、吉川弘文館)学習 11
この記事では設楽博己著「顔の考古学 異形の精神史」(2021、吉川弘文館)の「弥生時代の顔の表現」の「分銅形土製品の笑い顔」を学習します。
1 分銅形土製品の笑い顔
本章では弥生時代を代表する第二の道具である分銅形土製品の笑い顔をテーマとして、それが縄文時代出産土偶(腕部双孔土偶)を祖形とすることを学説・研究史の検討と事例により解説しています。
分銅形土製品
設楽博己著「顔の考古学 異形の精神史」(2021、吉川弘文館)から引用
分銅形土製品(カラー)
Photoshopニューラルフィルター機能により生成(以下カラーは同様)。
柔和な笑い顔となっていて、辟邪に見られる悪意ある笑い顔とは異なることが解説されています。出産にかかわる護符であると考えられています。
括れた部分があるので出産の時に握って使ったのかもしれません。
2 分銅形土製品の祖形と考えられる出産土偶
長原式土偶(腕部双孔土偶)
設楽博己著「顔の考古学 異形の精神史」(2021、吉川弘文館)から引用
長原式土偶(腕部双孔土偶)(カラー)
腕部双孔土偶
設楽博己著「顔の考古学 異形の精神史」(2021、吉川弘文館)から引用
腕部双孔土偶(カラー)
腕部双孔土偶の双孔が分銅形土偶のくびれになった旨の学説が紹介されています。
なお、残念ですが、自分にはその学説が図像的に説得力あるものと受け取れません。
同じ出産護符だったことに間違いなのだとおもいますが。
3 分銅形土製品の顔の表情を引き継いだ弥生後期土偶
分銅形土製品の顔の表情を引き継いだ弥生後期土偶
設楽博己著「顔の考古学 異形の精神史」(2021、吉川弘文館)から引用
分銅形土製品の顔の表情を引き継いだ弥生後期土偶(カラー)
この土偶にイレズミがなく、近隣出土土偶にイレズミを表現する線刻があるので、同じ時期・地域にイレズミのある顔とない顔があり、それは男女の違いであり、分銅形土製品が女性を表現していることの証左であることが述べられています。
イレズミのある弥生後期土偶
設楽博己著「顔の考古学 異形の精神史」(2021、吉川弘文館)から引用
イレズミのある弥生後期土偶(カラー)
4 感想
縄文土偶と弥生土偶の関連をイレズミに引き続き述べていることに強い興味をおぼえます。自分には弥生時代の遺物と縄文時代の遺物がどのように関連するのか、いままで得ている知識がほとんどないので、本書はとても刺激的です。
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