設楽博己著「顔の考古学 異形の精神史」(2021、吉川弘文館)学習 13
この記事では設楽博己著「顔の考古学 異形の精神史」(2021、吉川弘文館)の「弥生時代の顔の表現」の「土偶形容器にみる男女の表現」を学習します。
1 土偶形容器
弥生時代の東日本に土偶形容器が出土する。縄文晩期土偶の系譜をひくもので、中空で再葬の焼人骨を入れる容器として使われた。
2体が一緒に出土する例があり、乳房のあるものとないもので顔の形状も異なることから男女であると考えられる。
2体出土の土偶形容器
設楽博己著「顔の考古学 異形の精神史」(2021、吉川弘文館)から引用
縄文土偶は女であるが、弥生時代に男女の土偶形容器が出現するのは、農耕作業が男女半々で行われたことに因ると考えられる。
2体出土土偶形容器を時系列に並べると、弥生前期は女の方が大きいがその後逆転して男の方が大きくなる。
弥生時代の男女像の変化
設楽博己著「顔の考古学 異形の精神史」(2021、吉川弘文館)から引用
この変化は弥生前期までは女性原理による縄文土偶の伝統が作用し、弥生中期からは父系制敷いていた大陸からの影響が及んだ結果であると考えられる。
2 感想
土偶形容器を意識して観察したことがこれまでありません。土偶形容器展示館をみつけ、3Dモデルをつくりたいものです。
男女(夫婦)の土偶形容器の大きさが変化したことはショックを受けました。縄文時代に土製品の夫婦セットがつくられたとすれば女の方が大きく、男の方が小さくなる可能性が高まります。一方、縄文土器であたかも夫婦セットであるようなものがあります。これまで自分は現代茶碗の夫婦セットからの類推で大きなモノは男、小さなモノは女と考えてきました。この類推は間違っている可能性も浮かび上がります。次の2体一緒に出土したモノがもし夫婦セットなら、大きい方が女で小さい方が男なのか?そうであるならば、自分の想定が安易で甘かったことになります。
大小ペアで出土した加曽利B3式異形台付土器(加曽利貝塚)
加曽利貝塚博物館展示の様子
大小ペアで出土した五領ヶ台式土器(八千代市上谷遺跡)
八千代市郷土資料館展示の様子
出土の様子 八千代市郷土博物館展示から引用
大小ペアで出土した縄文中期深鉢形土器(茅野市下ノ原遺跡)
尖石縄文考古館展示の様子
説明 尖石縄文考古館展示から引用
大小土器が隣り合って出土しています。
2020.04.04記事「異形台付土器が大小ペアで出土した意義」
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