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2018年5月17日木曜日

猪への祈りのまとめ

猪の文化史考古編 17

この記事では「猪の文化史考古編」(新津健 2011 雄山閣)の「第2章猪の埋葬、そして祈り 5猪への祈りのまとめ」の学習をします。

1 猪への祈りのまとめ
著者は次のチャートをもってこれまでの諸検討を総とりまとめしています。

猪への祈りのまとめ 「猪の文化史考古編」(新津健 2011 雄山閣)から引用
大変参考になるチャートです。自分のブログで既に何回も紹介させていただいた記憶があります。
このチャートを参考に西根遺跡の出土物から想像できる出来事をまとめてみました。

2 西根遺跡の出土物に関わる想像

西根遺跡の出土物に関わる想像
アイヌの熊祭のような獣送り儀式が秋の堅果物収穫祭に行われたのではないだろうかと出土物から想像しています。

資料 戸神川谷津の秘密 参照
パワポ 戸神川谷津の秘密 参照 

2018年5月15日火曜日

猪に込められた祈りと願い

猪の文化史考古編 16

この記事では「猪の文化史考古編」(新津健 2011 雄山閣)の「第2章猪の埋葬、そして祈り 4猪に込められた祈りと願い」の学習をします。

1 猪に込められた祈りと願い
著者が2001年12月に宮崎県西都市銀鏡の里を訪れ、猪を捧げる祭を見学した様子がかかれています。
縄文の遺跡から発見される猪の頭蓋骨の意味を考える手立てを得られるかもしれないという期待を持って見学した様子が詳しく記述されています。
国の重要無形文化財である銀鏡神楽の開催にあたって直前に獲れた猪の頭部が奉納されていて「オニエ」と呼ばれ、「贄(にえ)」であり、神にささげる供物です。

銀鏡神楽のオニエの猪 「猪の文化史考古編」(新津健 2011 雄山閣)から引用
神楽では「ししとぎり」(猪の狩にかかわる見定め)が構成要素になっています。
神楽の翌日には猪の頭を焼き、参加者に猪の肉と酒がふるまわれます。
頭骨の一部は山麓に埋められ、著者はアイヌの人たちが行う熊祭にも似た物送りの思想が息づいていると述べています。
この現代社会に伝わっている猪祭祀例を思考上のテコとして活用して著者は縄文時代猪埋葬や埋納事例を詳しく検討して、次のように結論を述べています。
以上、縄文時代における猪について、成獣と幼獣の祭祀での役割を考えてきた。成獣は豊猟を願う儀式ー鎮魂、感謝を含めた物送りのような儀式に用いられた可能性を考えた。遺跡全体から発見される焼けた獣骨片もこれに含まれるのではないだろうか。そして幼獣については、より広い視野での豊穰や命のよみがえりを願うための犠牲獣として、その役割を演じたものとみなしたのである。」「猪の文化史考古編」(新津健 2011 雄山閣)から引用

2 感想
縄文時代の習俗を彷彿とさせるような祭祀が現代に伝わっていることを見つけ出しその現場に足を運び、縄文時代祭祀に関する思考を深める著者の活動が大変魅力的で刺激的です。
思考面における既成枠にとらわれない積極性があれば、現代民俗も縄文時代遺構・遺跡に関する情報と重ね合わせる思考が可能となり、縄文時代遺構・遺跡の解釈が豊かになると考えます。

2018年3月5日月曜日

釣手土器の猪造形

猪の文化史考古編 6

この記事では「猪の文化史考古編」(新津健 2011 雄山閣)の「第1章猪造形を追って 2神となった動物たち (2)土器に描かれた物語 ②釣手土器」の学習をします。
前回記事までと同様に学習といっても土器写真の文様を理解するという視覚的確認作業(=写真の観賞)です。

1 釣手土器の説明
釣手土器とは中期中頃から中期後半にかけて、長野山梨など中部地方や関東の山岳地域を中心につくられた土器で、内面や釣手の縁に煤がついていたり焦げ跡が残されているものが多く、この土器の中で火が燃やされたことは確かである。「古事記」や「日本書紀」にある火の神「カグツチ」とそれを生んだ「イザナミ」に由来する造形と説く研究もある。この釣手土器にも猪造形が見られる。

2 釣手土器の猪造形

図1 「猪の文化史考古編」(新津健 2011 雄山閣)から引用
釣手頭頂部に1頭、両脇にそれぞれ1頭ずつ猪が付く。きわめてリアルに猪を表現している。

図2 「猪の文化史考古編」(新津健 2011 雄山閣)から引用
正面に大きな丸い孔1つからなる造形が釣手頭頂部に1つと、その両脇に2個ずつ合計5個並ぶ。「平らな吻端」「半円筒形」という猪の特徴そのものである。親猪1頭とウリボウ4頭ということになろうか。
親猪の背面から頭にかけて蛇が這う。

図3 「猪の文化史考古編」(新津健 2011 雄山閣)から引用
頭頂部に3匹、鉢部の両側に2匹の合計5匹の動物が付く。
正面から見た時に限り猪で、背面から見ると目を始めとした頭部や身体は蛇とみてよい。

図4 「猪の文化史考古編」(新津健 2011 雄山閣)から引用
釣手部に3匹、背面の環を覗くかのように1匹、合計4匹、ツチノコのような動物が這う。蛇とみてよいのではないか。


図5 「猪の文化史考古編」(新津健 2011 雄山閣)から引用
鼻先が丸くしかも丸孔が開けられるものもある。目の表現では蛇とも共通する。この例は蛇と猪の組み合わせから構成される最初の造形かもしれない。
図4→図5→図3の順で「蛇」から「猪と蛇との融合」に進んでいくようである。

(図5は細部がつぶれていてよく理解できませんでした。)

図6 「猪の文化史考古編」(新津健 2011 雄山閣)から引用
釣手中央に大きな猪がいてその両側の子猪が並ぶ構成であり、猪であることはずんぐりした体つきからわかるが、正面が人の顔となっている。

図7 「猪の文化史考古編」(新津健 2011 雄山閣)から引用
「蝙蝠」とも言われる動物が付く。釣手頂部の顔、その顔から両側につらなる把手の表現は蝙蝠にふさわしい。しかしその鼻はやはり猪を思い起こすのに十分である。猪が意識されているのではなかろうか。

写真1 「猪の文化史考古編」(新津健 2011 雄山閣)から引用
釣手土器でもアーチの頂上に人の顔面が付く例。人面の横にならぶ丸い孔は猪の特徴の一つ「平らな吻端」に似ていて、やはり猪とみてよい。

写真2 「猪の文化史考古編」(新津健 2011 雄山閣)から引用
釣手土器でもアーチの頂上に人の顔面が付く例。人面の横にならぶ丸い孔は猪の特徴の一つ「平らな吻端」に似ていて、やはり猪とみてよい。


写真3 「猪の文化史考古編」(新津健 2011 雄山閣)から引用
釣手土器でもアーチの頂上に人の顔面が付く例。人面の横にならぶ丸い孔は猪の特徴の一つ「平らな吻端」に似ていて、やはり猪とみてよい。

3 感想
最初は図と写真の中の猪がどれなのかサッパリ判らなかったのですが、少しずつ理解できるようになってきました。
これらの土器を利用した祭祀の背景にある縄文神話がどのようなものであったのか、興味を持ちます。

2018年2月21日水曜日

猪、再び土器へ

猪の文化史考古編 3

この記事では「猪の文化史考古編」(新津健 2011 雄山閣)の「第1章猪造形を追って 2神となった動物たち (1)猪、再び土器へ」の学習をします。
学習といっても土器スケッチ図版を絵として理解し、その絵理解と説明文章を対応させるという基礎確認作業(=スケッチ観賞)です。
通常図書におけるよりも図版縮小が著しいため、このような図版を見慣れない自分にとっては図版の拡大による理解がどうしても必要です。図版の拡大は視力の良し悪しとは関係なく、理解を深めるためには(思考を深めるためには)自分にとってどうしても必要なことです。

「第1章猪造形を追って 2神となった動物たち (1)猪、再び土器へ」では土器から猪が消え、しばらくの時が流れた前期終末から中期の初期頃に猪が再登場し、さらに蛇も加わって土器をにぎわす様子を説明しています。
中期中葉には猪と蛇の造形が盛行するのですが、その造形が前期終末・中期初頭という時期に始まることの重要性を指摘しています。
それは縄文人が抱いた二つの動物、それに連なる縄文神話の土器への表現がこの時期に始まるという、画期を示すように思われるからであるとしています。

1 吻端(鼻先)を上に向けた獣面

吻端(鼻先)を上に向けた獣面 「猪の文化史考古編」(新津健 2011 雄山閣)から引用
「これはなんとなく猪のイメージが漂う。」

2 獣面の装飾

獣面の装飾 「猪の文化史考古編」(新津健 2011 雄山閣)から引用
「これは猪というよりも蛇とみられるものである。」

3 奇怪な動物顔面装飾

奇怪な動物顔面装飾 「猪の文化史考古編」(新津健 2011 雄山閣)から引用

「猪なのか蛇なのか、はたまた熊なのか。」 

4 奇怪な動物顔面装飾

奇怪な動物顔面装飾 「猪の文化史考古編」(新津健 2011 雄山閣)から引用

「猪なのか蛇なのか、はたまた熊なのか。」 

5 奇怪な動物顔面装飾

奇怪な動物顔面装飾 「猪の文化史考古編」(新津健 2011 雄山閣)から引用

「猪なのか蛇なのか、はたまた熊なのか。」

6 獣面付き土器

獣面付き土器  「猪の文化史考古編」(新津健 2011 雄山閣)から引用
「クマやコウモリなどの意見もあるが、鼻先の表現からは猪とみておきたい。なにやら可愛らしい猪でもある。」

7 人の顔とされている破片

人の顔とされている破片 「猪の文化史考古編」(新津健 2011 雄山閣)から引用
「猪の可能性がある。」

8 口縁部を這うリアルな蛇の造形

口縁部を這うリアルな蛇の造形 「猪の文化史考古編」(新津健 2011 雄山閣)から引用
「三角形の頭部や全体の表現から蝮とみてよかろう。」

9 蛇とみられる表現

蛇とみられる表現 「猪の文化史考古編」(新津健 2011 雄山閣)から引用

10 不思議な動物表現

不思議な動物表現
「小島俊彰氏はヤモリの類を想定するが、小野正文氏は「猪頭蛇尾」という表現で、縄文人が作り出した想像上の動物と考えている。」

11 不思議な動物表現

不思議な動物表現 「猪の文化史考古編」(新津健 2011 雄山閣)から引用
「10と同じ見方ができる。」
この図版だけ動物イメージ(頭部表現の動物らしさ)がどうしても湧きません。

12 蛇の目

蛇の目 「猪の文化史考古編」(新津健 2011 雄山閣)から引用
「蛇の目だけが強調されたとも考えられる。」