猪の文化史考古編 10
2018.03.16記事「リアル猪形土製品 その2」で上谷遺跡出土リアル猪形土製品が図書に掲載されていることを紹介しました。
上谷遺跡は時代はこれまでのところ奈良平安時代ですが私の学習フィールドであり、強くこだわりをもちますので、その土製品の記述を発掘調査報告書で確認してみました。
写真掲載を期待していたのですが、それはありませんでした。
1 上谷遺跡出土動物形土製品の記述
上谷遺跡発掘調査報告書第5分冊の最終節に「上谷遺跡出土の土偶・動物形土製品・土製品」(越川欣和)という署名つきページがあり、その中で動物形土製品が報告されています。
上谷遺跡出土の土偶・動物形土製品・土製品 発掘調査報告書第5分冊から引用 加筆
「上谷遺跡から動物形土製品1点、土偶3点、土製品・粘土塊数点、いずれも遺物包含層から出土している。」
「9はK8-36-2グリッドより出土した。イノシシ形である。頭部は突出する。左目のみ刺突、耳は粘土の貼付で表現され、口・鼻は表現されていない。背はつままれており、後部では右側に曲がる。背に細い穿孔がある。尾は粘土をつまんで表している。四足は短い。土製品の表面には調整のあとがある。文様はない。残存状況良好で、ほぼ全体が残る。長さ36.5㎜、高さ23㎜、幅21㎜、重さ13g。製作時期は伴出土器と動物形土製品の類例が縄文時代中期にみられることから、五領ヶ台式期のものであろう。」
「上谷遺跡の動物形土製品の製作時期は縄文時代中期初頭であり、出現期の資料の一つである。中期の動物形土製品は、丁寧な製作技法・無文・写実的形態という共通性があり、動物形土製品の形態からも一つのタイプとして考えられるであろう。また出土状況・残存状況にも共通性が確認された。この結果、動物形土製品の出現期の縄文時代中期の特徴が明らかにされた。」
2 出土位置の確認
動物形土製品出土位置
動物形土製品出土位置
赤表示は縄文時代遺構
動物形土製品出土位置は台地縁辺部であり、近くの縄文時代中期遺構は土坑がいくつか確認されます。竪穴住居からは離れた場所です。
谷底が見下ろせる風景が開けた場所の遺物包含層から出土したことから、そのような野外でイノシシをテーマにした何らかの祭祀が行われたのかもしれないと空想します。
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