この記事では「猪の文化史考古編」(新津健 2011 雄山閣)の「第1章猪造形を追って 2神となった動物たち (3)猪形土製品の世界 ②抽象化された猪」と「同 ③猪形土製品の役割とは?」の学習をします。
1 猪形土製品の種類と変遷
猪らしい表現を抜き出してみると
1 突出した吻端(鼻先)と鼻孔
2 たてがみ
3 ずんぐりしとした体形
このような特徴を判断基準として表現のリアルさを分類して時代順にならべた図を掲載しています。
Aが最もリアル、Dが最も強調・デフォルメされたものです。
この図書ではDについても猪であることの説明が丁寧に書かれています。
2 猪形土製品の役割
この図書では猪形土製品に関する研究者の考えを多数紹介して、それらをまとめる形でつぎのように猪形土製品の役割を記述しています。
「今回整理した猪の製品が作られた時期や地域、それにいくつかに分類できるタイプの継続性などを考えてみると、猪形はやはり動物祭祀にかかわった土製品と考えてよさそうである。
食料としても欠かすことのできない動物であることに加え、縄文神話にも登場するような大切な動物である猪、それにかかわった祈りの「道具」が猪形土製品であったと考えたい。
先にみたように、縄文中期の人々は土器の表面に猪を登場させた。中期縄文人にとって猪は、豊かな生活をもたらしてくれる神話世界の重要なキャストであったからに他ならない。猪形土製品が広まる後期という時期には、その物語りを土器に描く方法はすでに廃れてしまっていた。そのかわりを猪の土製品が務めたとするには、あまりにも出土例が少なくまた派手さもない。しかし後期、晩期の縄文人にとっても猪はやはり重要な祭祀を受け持っていたことは間違いないと思われる。それは次の項目でふれるが、後期や晩期には「猪そのもの」を用いた祭りが行なわれていたことが、頭や下顎の骨が特殊な状態で出土することから確認できるからである。
豊猟を願う祈りに、そして豊猟をもたらしてくれた感謝の祭りに、これら猪形土製品が用いられたのではないか。そして時には、豊穣の女神である土偶に対する祈りとともに、猪の土製品にも同じ願いが込められたこともあったのであろう。しかし、土偶にくらべ出土数は圧倒的に少ない。やはり実際の猪そのものを用いた祭祀が主体であり、猪形土製品はそれに付属した形で用いられたことが原因なのかもしれない。」(新津健 2011 雄山閣)から引用
3 感想
猪形土製品は狩猟対象(食糧)である猪豊猟を祈願する祭祀で使われた道具(祭具)であり、猪現物に代わって、あるいは猪現物と一緒に使って祭祀効果をより一層増大させるために用いられた価値の大きな祈願ツール(土偶類似ツール)として考えてよさそうです。
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