2019年6月23日日曜日

毒のないアーモンドのつくり方

ジャレド・ダイアモンド著「銃・病原菌・鉄」 10

ジャレド・ダイアモンド著「銃・病原菌・鉄」の学習をページを追ってしています。この記事では「第7章 毒のないアーモンドのつくり方」を学習します。この章は自然のアーモンドの実は猛毒があるのに、人はどのようにして無毒のアーモンドをつくったかということに象徴される、植物の栽培化のプロセスについて詳しく解説しています。

1 人類の植物栽培化のプロセス
人類の植物栽培化プロセスを要約すると、植物サイドの突然変異による有用特性を人類が無意識的・意識的に選別利用することによってその有用特性が助長され、同時に耕うんや施肥等の人工環境によりその有用特性がより一層促進されたということです。

古代の食料生産地の栽培作物

2 オーク(ドングリ)が栽培化されなかった理由
その実のドングリが食用となるオークがいまだ栽培化されていないことの説明が書かれています。ドングリが縄文人主食であり、縄文人が農耕を始めなかったことともかかわるかもしれないと考え興味がわきました。
ドングリはアメリカ先住民の主食として利用され、ヨーロッパ農民の飢饉に備える予備食料となっていました。
ドングリが栽培化されなかった理由は次のように記述されています。
「オークの場合を考えてみると、三球三振で栽培化に失敗してしまう理由がそろっている。まず第一に問題になるのが、オークの成長の遅さである。小麦はまいて数カ月で収穫できる。アーモンドは三、四年で実をつける成木となる。しかしオークは、われわれの忍耐が尽きてしまうほど成長が遅く、一〇年以上たたないと実がならない。また、オークはリスむきではあっても、われわれ人間むきではない。リスがドングリを埋めたり掘りだしたり、食べているのをよく目にするのは、オークがリスむきの植物だからである。そして、野生のオークが、リスが掘りだすのをたまたま忘れたドングリから発芽することを考えると、新芽の数は森のあちこちにリスが好き勝手にまき散らしてしまうおびただしい数のドングリに比例する。そんなにたくさんのオークを相手にわれわれ人間が、希望する特性を有する個体を選抜栽培できる確率はおそろしく低い。同じような理由で、ヨーロッパ人やアメリカ先住民が木の実を採集していたブナやヒッコリーなども栽培化されなかったと思われる。
さらなる理由は、栽培化されたアーモンドとちがって、ドングリの苦みは、ひとつの遺伝子ではなく、複数の遺伝子によってコントロールされていることである。アーモンドの場合は、苦みのない突然変異体の種子を植えれば、遺伝の法則によって、植えた種子の半分は親木と同様に苦みのない実をみのらせる。ところが、複数の遺伝子によって苦みがコントロールされているオークの場合、遺伝の法則によって、植えた種子のほぼ全部に苦みのある実がみのる。このちがいだけで初期の農民がくじけてしまい、リスとの競争に勝って希望する特性を有する個体を選抜し、忍耐強く実のなるのを待つ気にならなかったとしても、それは充分に想像できる。」

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