2019年6月13日木曜日

農耕を始めた人と始めなかった人

ジャレド・ダイアモンド著「銃・病原菌・鉄」 7

ジャレド・ダイアモンド著「銃・病原菌・鉄」の学習をページを追ってしています。この記事では「第6章 農耕を始めた人と始めなかった人」を学習します。

1 狩猟採集生活から食料生産生活へと移行させた要因
狩猟採集生活から食料生産生活へと移行させた要因を5つ列挙して詳しく説明しています。
5つの要因に小見出しをつけるとすれば次にようにつけることができます。

要因1 動物資源の減少
要因2 動物資源減少期における栽培可能野生種の増加
要因3 食料生産技術の発達
要因4 人口増加による自己触媒的な食料生産活動の活発化
要因5 食料生産者人口数の狩猟採集民に対する圧倒

2 狩猟採集生活から食料生産生活へと移行させた要因に関する抜粋
狩猟採集生活から食料生産生活へと移行させた要因は何であったか
要因1 動物資源の減少
この一万三〇〇〇年のあいだに、入手可能な自然資源(とくに動物資源)が徐々に減少し、狩猟採集生活に必要な動植物の確保がしだいにむずかしくなったということである。
要因2 動物資源減少期における栽培可能野生種の増加
獲物となる野生動物がいなくなり、狩猟採集がむずかしくなったまさにその時期に、栽培化可能な野生種が増えたことで作物の栽培がより見返りのあるものになったことである。
更新世の終わりに気候が変化したため、肥沃三日月地帯では、短時間で大きな収穫が得られる野生の穀類の自生範囲が大幅に拡大した。肥沃三日月地帯では、まずこれらの野生種が収穫され、その収穫物にまじっていた種子が徐々に栽培化される過程を経て、大麦や小麦が農作物として栽培されるようになったのである。
要因3 食料生産技術の発達
食料生産に必要な技術、つまり自然の実りを刈り入れ、加工し、貯蔵する技術がしだいに発達し、食料生産のノウハウとして蓄積されていったことである。
要因4 人口増加による自己触媒的な食料生産活動の活発化
人口密度の増加と食料生産の増加との関係である。考古学の調査においては、食料生産がおこなわれていた証拠が見つかると、その場所の人口が稠密化した証拠もかならず見つかる。
 人びとが食料生産の生活様式へと移行していく過程で見られるのは、自己触媒と呼ばれる作用になぞらえることができる。自己触媒的過程においては、結果そのものがその過程の促進をさらに早める正のフィードバックとして作用する。人口密度の増加は、知らず知らずのうちに野生植物を栽培化する方向に歩みはじめた地域において自己触媒的に作用し、ますます人びとを食料生産に駆りたて、その結果、地域の人口密度はさらに増加したのである。
要因5 食料生産者人口数の狩猟採集民に対する圧倒
狩猟採集民と食料生産者が接触する地域で、もっとも決定的な役割を果たしたものである。食料生産者は狩猟採集民より数のうえで圧倒的に多かったため、それを武器に狩猟採集民を追い払ったり殺すことができた(技術的により発達し、各種疫病への免疫を持ち、職業軍人を有していたことが、彼らに有利にはたらいたことはいうまでもない)。ちなみに、土着の狩猟採集民が食料生産の方法をよそから習得して農耕民になった地域では、農耕民にならずにいた人たちが、出生数で農耕民に圧倒されている。 この結果、食料生産に適した地域ではほとんどの場合、土着の狩猟採集民は、近隣地域の食料生産者によって追いだされてしまうか、食料を生産する生活に移行することによって生き延びるかのいずれかの運命をたどっている。
農耕民として生き延びることができた狩猟採集民は、すでに充分な人口を擁していた集団か、地理的な理由で近隣の食料生産者が簡単に移住してこれず、時間的猶予をあたえられた地域の集団である。この時間的猶予によって彼らは、先史時代に農耕を身につけ、農耕民として生き延びることができた。これが起こったであろう地域としては、アメリカ合衆国南西部、地中海地方西部、ヨーロッパの大西洋沿岸、日本列島の一部などが考えられる。しかし、インドネシア、アジア南東部の熱帯地域、アフリカ赤道地帯の大部分、そしておそらくヨーロッパの一部では、先史時代の狩猟採集民は食料生産者にとってかわられてしまった。同じことは、オーストラリアやアメリカ合衆国西部で近代に起こっている。
ジャレドダイアモンド.銃・病原菌・鉄 上巻から抜粋引用
要因小見出しは引用者追記

3 メモ
日本の縄文時代から弥生時代への移行についても触れられていて強く興味が湧きます。
列島がユーラシア大陸から海で離れていたことが縄文時代が長期にわたって継続したことの主要因であることが判ります。縄文人は温室育ちであり、その終焉も人類史的にみると遺伝子をかなり残すことができ「恵まれた部類?」であったのかもしれません。

4 参考 食料生産が始まった地域と年代(及び縄文土器形式対応)

参考 食料生産が始まった地域と年代(及び縄文土器形式対応)
2019.04.10記事「持てるものと持たざるものの歴史」の情報をわかりやすくした地図です。

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