設楽博己著「顔の考古学 異形の精神史」(2021、吉川弘文館)学習 6
1 目まわりイレズミと口まわりイレズミ
黥面絵画様式の変遷
設楽博己著「顔の考古学 異形の精神史」(2021、吉川弘文館)から引用
設楽博己著「顔の考古学 異形の精神史」(2021、吉川弘文館)掲載の黥面絵画様式の変遷をジロジロみているとイレズミに目まわりと口まわりの2種存在に気が付きました。この図に色を塗って判りやすくしてみました。
目まわりイレズミと口まわりイレズミ
2 web検索
1のような観点からweb検索してみました。確かに目まわりイレズミの事例と口まわりイレズミの例ばかりです。別の分類にすべきような例はたまたまかもしれませんが見つかりませんでした。次に代表例を示します。
台湾タイヤル族女性 口まわりイレズミ
サイトWikipedia「Atayal people」から引用
アイヌ女性 口まわりイレズミ
サイト「VINTAGE EVERYDAY」から引用
マオリ族女性 口まわりイレズミ
サイトWikipedia「Tā moko」から引用
マオリ族女性 口まわりイレズミ
サイトWikipedia「Tā moko」から引用
マオリ族男性 目まわりイレズミと口まわりイレズミ
サイトWikipedia「Tā moko」
マオリ族男性 目まわりイレズミ
サイトWikipedia「Tā moko」から引用
3 感想
目まわりイレズミと口まわりイレズミ
3-1 目まわりイレズミと口まわりイレズミはセット?
・考古資料では目まわりイレズミと口まわりイレズミの双方があるものが多いような印象を受けますが民族事例では目まわりイレズミは男性、口まわりイレズミは女性に分化しているような印象を受けます。
・縄文晩期土偶は女性(女神)を表現している人形ですが、それに目まわりイレズミと口まわりイレズミがありますから、黥面はもともと男女にかかわらず目まわりイレズミと口まわりイレズミがセットで施術されていたのかもしれません。
・台湾タイヤル族女性の額にイレズミが残されていて、目まわりイレズミの名残かもしれません。
3-2 民族例で男性に目まわりイレズミが女性に口まわりイレズミが多い理由
・顔のイレズミの意味が魔除けであるとすると、空想の域を出ませんが、目まわりイレズミは鋭い眼光による威圧感演出に本質を求めることができます。口まわりイレズミは口が異常なまでに大きく開いた様子を演出し、相手を食い倒すという威嚇の様子にその起源があると考えます。
・鋭い眼光による威圧感は実生活における武力にもかかわるものであり、男性にふさわしい特性であることから口まわりイレズミは男性に多く施術されたと考えます。
・大口で威嚇するという動物的な方法は実生活における武力にはかかわらない象徴性が高いものです。武力にかかわらないという点で女性に多く施術されたと考えます。
3-3 縄文晩期土偶の口まわりイレズミと民族事例の類似
縄文晩期土偶の口まわりイレズミは口から耳の方向に伸びています。このパターンと台湾タイヤル族女性イレズミ、アイヌ女性イレズミが似ています。縄文時代女性の顔イレズミの一部が現代にまで伝わってきていると考えます。
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