2019年1月14日月曜日

中川毅著「人類と気候の10万年史」

中川毅著「人類と気候の10万年史」(ブルーバックス)を読み「驚きの地球気候史」に本当に驚きました。数十年前に自分にインプットされた同種知識をこの本で感動を伴って2019年版に書き換えることができました。眼からウロコが落ちた思いです。

中川毅著「人類と気候の10万年史」(ブルーバックス)表紙

1 参考になった点
●水月湖年縞堆積物
水月湖年縞堆積物が毎年の気候指標となることに着目し、ボーリング技術により切れ目のない15万年の年縞を採取した活動が詳しく述べられています。得られたデータは世界的意義がある過去気候資料であり、地質学の標準時計になりました。

年縞の例
中川毅著「人類と気候の10万年史」(ブルーバックス)から引用

●過去の気候変動
水月湖年縞堆積物データをもとに過去の気候変動について詳しく解説しています。

水月湖15万年の気候の歴史
中川毅著「人類と気候の10万年史」(ブルーバックス)から引用

●気候変動に与える人の影響
気候変動に与える人の影響について詳しく論じています。現在は本来氷河期に入っているべき時期であるが(数千年前からの)人の活動によりそれが遅れている(さらに温暖化が進んでいる)という説も紹介されています。

氷床のボーリング試料に記録された、過去の温室効果ガス濃度
中川毅著「人類と気候の10万年史」(ブルーバックス)から引用

●今後の気候変動とそれに対する人類の対処
今後の気候変動とそれに対する人類の対処について、理学書の範囲を超えて、著者の考えを詳しく展開しています。

2 感想
・水月湖という埋まらない、奇跡的ともいえる堆積環境の存在に驚きました。
・年縞堆積物を正確に掘り出す作業が最初にあり、その作業期間は本来の研究業績が望めないのですから、その地味な活動を展開した研究グループの先見性は素晴らしいと思います。
・水月湖年縞堆積物の学術的世界的意義の大きさに驚きます。
・この図書でのべられているように、旧石器時代から縄文時代にかかるころの環境が詳しく判りつつあります。その時代に関する自分の考古学習的興味がますます深まります。
・理学書の範囲を超えて将来の気候変動とその人類対処について述べている様子は素晴らしいと思います。通常の学者は専門内部の事から話が飛び出すことは少ないですが、著者は自分の研究意義を人類社会レベルで思考しています。

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