ジャレド・ダイアモンド著「銃・病原菌・鉄」の学習記事第2回目です。最初が2018.09.25記事「ジャレド・ダイアモンド著「銃・病原菌・鉄」の学習スタート」ですからなんと4ヵ月ぶりになりお詫びします。
この図書以前にジャレド・ダイアモンド著「文明崩壊」を2017年12月から2018年9月にかけてブログ花見川流域を歩く番外編で24記事にわたり学習しています。「文明崩壊」から多くの学習ヒントを取得することができ、特に鳴神山遺跡(奈良時代開発集落)の衰滅原因考察に大いに役立ちました。しかし「文明崩壊」の事例はほとんど全て農業社会でした。
その点、「銃・病原菌・鉄」は狩猟採取社会が農業社会に発展する際の地理的不均衡がその後の現代にまでつづく世界社会不均衡の原因であることを暴き出していて、日本縄文社会の消長を考える上で参考になる情報を得られそうです。縄文学習との関連を気にしながら「銃・病原菌・鉄」の学習を進めることにします。
この記事では「第1章 13000年前のスタートライン」を学習します。
1 13000年前のスタートライン
著者は最初に次のような結論を述べています。
「人類の歴史を、それぞれの大陸ごとのちがいに目を向けて考察するには、紀元前1万1000年頃、すなわち現在よりおよそ1万3000年前を出発点とするのが適切だろう。1万3000年前とは、地質学的には更新世の最終氷河期が終わり、現在に至る完新世がはじまった時期にあたる。これは、世界のいくつかの地域で村落生活がはじまり、アメリカ大陸に人が住みはじめた時期にも相当する。少なくとも一部の地域では、それから数千年以内には植物の栽培化や動物の家畜化がはじまっている。」
つまり13000年前が現代社会の不均衡を考える上でのスタートラインとして設定できるとしています。
13000年前以前の状況で既に大陸間不均衡の差が存在していなかったという著者の考えをこの章では以下のように詳しく説明しています。
・10万年前から5万年前までの間に人類に「大躍進」があった。形状の揃った石器、装身具、釣針、銛、投げ槍、弓矢、壁画、彫像類、楽器類などが出土。人類の咽頭が発話可能となり言語能力が使えるようになったから。
・「大躍進」はアフリカ起源か世界同時発生かはまだわからない。
・「大躍進」時代はアフリカとユーラシアにしか住んでいなかった人類がオーストラリア大陸とニューギニアに広がった時期である。
・約20000年前に人類はシベリヤにまで拡大した。
・14000年前からアメリカ大陸に人類が拡大し、13000年前頃北アメリカ大陸で人口が増加した。クローヴィス式遺跡がこの時期に集中する。1000年間の間に南アメリカ大陸に広まった。
・13000年前以前に現代社会の不均衡(それは西暦1500年頃の不均衡に起因するから、本質的には西暦1500年頃までに生じた世界の不均衡)に結びつく要因を大陸間比較で見つけることはできない。
人類の拡散
ジャレド・ダイアモンド著「銃・病原菌・鉄」から引用
2 考察
人類がスタートラインに立った13000年前頃の様子について、アメリカ大陸人類拡大図と日本縄文草創期変遷図を結びつけてみました。
人類の南北アメリカ大陸進出と縄文草創期変遷の時間軸対応
アメリカ大陸に人類が進出した時期と縄文草創期がほぼ一致します。
氷河時代が終焉を迎えたという環境変化によりアメリカでは氷河後退によるアラスカからの通路成立、日本では植生変化による食料確保方法の変化などが生れたものと推測します。
隆線文土器について思考を巡らす時、その時代がアメリカ大陸人類進出時期と重なると考えると、そのような結びつきをこれまで考えたことがなかったので刺激を受けます。その刺激により、隆線文土器の意義についてより深く考えてみたい、考える価値があるに違いないと考えます。隆線文土器に対する興味が増します。
クローヴィス式遺跡と縄文草創期遺跡の出土物等比較資料があれば入手して較べてみたくなります。
なお、アメリカ大陸における土器発生は南アメリカで7500年前、北アメリカで5500年前と言われています。(「縄文はいつから」による)
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