2018年8月4日土曜日

縄文社会をどう考えるべきか

「縄文時代 その枠組み・文化・社会をどう捉えるか?」 10

山田康弘・国立歴史民俗博物館編「縄文時代 その枠組み・文化・社会をどう捉えるか?」(2017、吉川弘文館)の学習をしてそのメモを書いています。目次に沿って進めまています。この記事は「9 縄文社会をどう考えるべきか 阿部芳郎」の抜き書きと感想です。

1 縄文社会をどう考えるべきか
著者は最初に「従前の時代観の中に新たな発見を位置づけて説明を試みるのではなく、新たな発見を正視するなかで、これまでの歴史観に再検討を加えることこそ現在の縄文時代研究に求められている課題なのです。」と基本的な研究上の姿勢を述べています。
次の項目に従って著者の考え方を詳しく展開しています。
(1)縄文の集落と生業
(2)縄文祭祀の発達
(3)縄文社会をどう考えるか
縄文の集落と生業では著者のフィールドである印旛沼南岸を例によりミクロな視点から発掘を行うことが大切であり、そこから居住の在り方や生業について詳しく論じています。

印旛沼南岸の遺跡 山田康弘・国立歴史民俗博物館編「縄文時代 その枠組み・文化・社会をどう捉えるか?」(2017、吉川弘文館)から引用

著者は集落と生業、祭祀について安易で恣意的な従来の思考を批判して、新しい縄文時代観の検討の必要性を強調しています。

2 感想
著者は中期以降の気候寒冷化が文化停滞の要因であったという見解の多くが、寒くなると何が変化するかという具体的な検証をしないで、ただ寒冷化は文化を衰退させる要因であるを前提とした議論に終始していると批判しています。仮説を個々の地域や遺跡で具体的に検証する手続きが見られないことを厳しく批判しています。
この著者の指摘と批判に強く同感しました。
「千葉県の歴史 通史編 原始・古代1」(千葉県発行)では縄文社会の消長の基本は気候変動の結果であると理解できる説明になっていて、強い違和感・疑問を持ちました。そのような誤った思考方法に著者が強い批判を向けていることは、縄文研究がより正確で合理的な方向に向かう様子を私に感得させるものです。

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山田康弘・国立歴史民俗博物館編「縄文時代 その枠組み・文化・社会をどう捉えるか?」(2017、吉川弘文館)の学習をこれで終わります。

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