2018年8月9日木曜日

つくられた縄文時代

「つくられた縄文時代-日本文化の現像を探る-」(山田康弘、新潮選書) 1

2018.07.09記事「縄文時代はどのように語られてきたのか」をきっかけに読み始めた「つくられた縄文時代-日本文化の現像を探る-」(山田康弘、新潮選書)の感想をメモします。この記事では「第1章縄文時代はどのように語られてきたのか」と「第2章ユートピアとしての時代と階層化した社会のある時代」の感想をメモします。

1 第1章縄文時代はどのように語られてきたのか
モースの大森貝塚発掘にはじまり、シーボルトの研究などを経て石器時代人がアイヌであるかコロボックルであるかなどの論争が詳しく紹介されていてこれまで自分が知らなかった知識を得ることができました。戦前の最終段階では石器時代の人々は現代日本人の直接的な「祖先」であることが明らかになったのですが、時局柄人々に浸透する知識にはならなかったようです。
戦後の社会情勢のなかで日本の始まりを新たに説明する必要が生れ、そうした状況のなかで縄文時代、弥生時代という概念がうまれた様子がくわしく述べられています。

2 第2章ユートピアとしての時代と階層化した社会のある時代
縄文時代に関する教科書記述の変遷を詳しく分析するなかで、また社会情勢の変化との対応のなかで「縄文平等社会論」「豊かなユートピア縄文時代像」が見直しを迫られ「縄文階層化社会論」が勢いを増している様子が詳しく展開説明されていて、強い興味を覚えました。
本章の趣旨は考古学といえども研究者の歴史観(歴史的事象の捉え方)は世相とともに変化していくものであり、時代から超越することは困難であるということを述べた点にあります。

3 感想
感想1
第2章趣旨(考古学研究の動向と世相との関係)とは一歩はなれて、「縄文時代のタテ方向の議論」の記述に興味を惹かれました。これまで全く無知識であった縄文階層化社会論の系譜に関する基礎知識を入手できたからです。
ここで紹介されている図書についても芋づる式に学習することにします。

感想2
大膳野南貝塚学習で、堀之内式期に絶頂期を迎える集落に漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居が存在していて、その2つが集落内の階層的な様子を示していると捉えました。
大膳野南貝塚中間とりまとめ資料(集成版) 参照
この学習仮説が最近の「縄文階層化社会論」研究動向からみて、とんでもない破天荒な仮説とはいいきれないとうぬぼれることができました。


kindle版「つくられた縄文時代」(山田康弘、新潮社、2016)

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