山田康弘著「縄文時代の歴史」(2019、講談社現代新書)学習 37
「第五章 精神文化の発達と社会の複雑化 後期・晩期(Ⅳ期)」の「4 多様な祭祀の展開と精巧な祭祀・呪術具の発達」を学習します。
1 土器の精製化・粗製化
・後期に精製土器と粗製土器の分化
・精製土器に深鉢形、浅鉢形に加え、壺形土器、注口土器、香炉形土器、皿形土器、台付鉢形土器などが生まれる。
・祭祀には精製土器が使われる傾向が強い。
2 活発化した動物儀礼
・動植物を主体的に用いて行われたと思われる儀礼を動植物儀礼と言う。…生命の再生・狩猟の成功祈願。
・東京都西ヶ原貝塚…貝層下からイノシシ下顎、イノシシやシカの骨が面状出土、鹿角製品の意図的配置。
・千葉県西広貝塚…イノシシ頭蓋・磨石類・ハマグリ・オオノガイ・アワビ類(赤色顔料)
・東京都下宅部遺跡…弓の破損部位の上にイノシシの下顎
東京都下宅部遺跡の狩猟儀礼
山田康弘著「縄文時代の歴史」(2019、講談社現代新書)から引用
・静岡県井戸川遺跡…イノシシ・シカ・イルカ頭骨の環状配置。
・山梨県金生遺跡…ウリボウの焼けた下顎骨100個体分以上。
・動物儀礼の間接的証拠としての動物形土製品。イノシシ、トリ、サル、イヌ、マキガイ、イカ、
イノシシ形土製品
山田康弘著「縄文時代の歴史」(2019、講談社現代新書)から引用
・海獣とトリのキメラ、二本足で立つカメ。
・動物の木製品。
・埼玉県デーノタメ遺跡…クルミ形土製品
・秋田県池内遺跡…クルミ殻に線刻…植物を対象とした祭祀・呪術の想像。
参考 大膳野南貝塚のシカ頭骨列
参考 大膳野南貝塚のシカ頭骨列の復元空想図
ブログ花見川流域を歩く2018.06.27記事「貝殻・獣骨・土器片出土の意義」
3 多彩な装身具とその着装理由
・漆塗りの櫛、骨角製の笄、石製の玦状耳飾り、土製耳飾り、多種多様な素材による首飾り、鹿角製の腰飾り、トリの長管骨やイノシシの犬歯による足飾りなど。
・ボディペインティング、抜歯、入れ墨、傷身。
・強制力をもった慣習、他者との差異、他者との同一性。
4 年齢と性差による装身具の着装原理
・晩期に装身具の数は多くなる。
・壮年期と熟年期に多い。
・年齢によって着装できる装身具が決まっていた。
・土製耳飾りは大人のみ。通過儀礼毎に大きさを取り換える。
・装身具着装意義として年齢等に基づく社会的地位や立場の表示。
・老年での着装率低下から、退役や隠居の慣習存在の推定。
・男性…頭飾りと腰飾り、女性…腕飾り
5 呪術的な医療行為としての装身具着装
・岩手県宮野貝塚…頸椎病変女性人骨の首付近にイノシシの切歯犬歯の牙玉10点等の首飾り。
・関節障害部位に装身具が着装された例。
・装身具による呪術的医療行為、「お守り」。
・骨折等の整形・修復は確認できていない。
小児麻痺?罹患人骨
山田康弘著「縄文時代の歴史」(2019、講談社現代新書)から引用
6 素材別にみた装身具
・男性ではイノシシ(犬歯)とシカ(鹿角)が多い。女性は貝が多い。
・男性では力強さ等を連想させるイノシシ、サメ、ワシ、オオカミが注目される。
7 装身具の着装原理と社会
・自己能力の拡張
・性的魅力の向上
・身体的・心理的保護(魔除け)
・地位・立場・経験の表示(集団統率者や、呪術者、勇者、特殊能力者、特殊事象経験者などを表示)
8 抜歯の意義
・見せることに本質的な意味がある。
抜歯の進行図
山田康弘著「縄文時代の歴史」(2019、講談社現代新書)から引用
9 感想
ア 精製土器と粗製土器分化について
・中期以降特に後晩期に祭祀が独立した時間・空間として特化していったと仮想します。
それ以前は生活全体が祭祀的に営まれていたと仮想します。
外来神話の地母神殺害再生神話伝来により一気に祭祀が独立した生活項目になり、祭祀と実生活の分離が生まれ、その一環として土器の精製・粗製分化が生まれたと仮想します。
イ 動物儀礼について
・動物儀礼の意味が中期以降特に後晩期にはそれ以前と大幅に様変わりしているのではないだろうかと想像します。
・狩猟で刈り取ってきた動物の頭骨等を利用した儀礼が最初から存在する動物儀礼であると想像します。
・外来神話である地母神殺害再生神話伝来以降に、人と一緒に暮らした動物(養育したイノシシ、クマ等)を天に送る儀礼が新たに発生したのではないかと空想します。
ウ 装身具と祭祀
・装身具の特定材質や種類と呪術者(祭祀執行者)が対応していたと考えます。たとえば加曽利貝塚特殊遺構例ではヒスイ製丸玉が石棒や異形台付土器とともに出土しています。ヒスイ丸玉を着装した祭祀執行者の存在を暗示しています。
加曽利貝塚特殊遺構(112号住居跡)
「史跡加曽利貝塚総括報告書」(2017、千葉市教育委員会)から引用・塗色・追記
0 件のコメント:
コメントを投稿