2021年3月16日火曜日

人面墨書土器

 設楽博己著「顔の考古学 異形の精神史」(2021、吉川弘文館)学習 4

設楽博己著「顔の考古学 異形の精神史」(2021、吉川弘文館)の方相氏、辟邪の概念に触発されて、過去に熱中したことのある人面墨書土器についてふりかえってみました。

5年前に下にリンクしたような人面墨書土器関連記事をブログ「花見川流域を歩く」にかきました。その時は方相氏、辟邪という概念を知りませんでした。自分の問題意識は土器に描かれた人面が人か鬼(疾病神)というものでした。

ところが、今ふりかえると、鬼(あるいは疾病神)と考えた人面墨書土器例(平城京出土人面墨書土器の例)は、実は方相氏、辟邪であると根本的に疑い始めました。

当時は土器に鬼(あるいは疾病神)を描いて、それを川や溝など結界と考えられるところに置き、「鬼は外」のような気持ちで使ったのではないかと自分を納得させました。

しかし、土器に辟邪を描き、それを結界に置いたと考えると、その方が祈願のあり方として全うです。

土器に鬼(あるいは疾病神)の姿を描くという行為が、鬼(あるいは疾病神)を退治することに結びつくという祈願のあり方は普通ではあり得ないと考えるようになりました。

人を襲い食う鬼や人を病に倒す疾病神が怖がるような辟邪を土器に描き、その土器に辟邪が喜ぶ食べ物を入れ、辟邪が思う存分鬼や疾病神をやっつけるように祈願したのではないかと考えるようになりました。

自画像とは到底考えられない悪相の人面墨書土器は辟邪かもしれないと考えるようになりました。


平城京出土人面墨書土器の例

「古代人の顔と祈り」橿原市博物館講演会資料(奈良文化財研究所 森川実)から引用

千葉県出土人面墨書土器の多くは自画像で、国神(国玉神)に延命をお願いし、延命をお願いするものがこの顔ですと自画像を書いたといわれています。


千葉県出土人面墨書土器例1


千葉県出土人面墨書土器例1

方相氏、辟邪はその後鬼に零落するようですが、墨書土器の時代はまだイキイキとした方相氏、辟邪が活躍していたに違いありません。

ブログ「花見川流域を歩く」の人面墨書土器関連記事

2016.04.24記事「人面墨書土器の人面は人か鬼か?

2016.04.25記事「千葉県出土人面墨書土器の人面は祈願者の自画像

2016.04.27記事「珍しいイスラム人面画を触媒とした人面墨書土器の意義再考察 その1

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