2020年4月7日火曜日

春成秀爾著「更新世末の大形獣の絶滅と人類」学習

山田康弘著「縄文時代の歴史」(2019、講談社現代新書)の参考文献(佐藤宏之著「日本列島の成立と狩猟採集の社会」)に出ていて参考文献の学習です。

1 春成秀爾著「更新世末の大形獣の絶滅と人類」(国立歴史民俗博物館研究報告 第90集 2001年3月)
国立歴史民俗博物館サイトからダウンロードして入手できました。専門論文が一般市民でも即入手できるということは素晴らしいことです。
https://www.rekihaku.ac.jp/outline/publication/ronbun/ronbun4/index.html

2 縄文土器出現の契機に関する記述
佐藤宏之著「日本列島の成立と狩猟採集の社会」で縄文土器出現の契機について次のように記述し、その参考文献として春成秀爾著「更新世末の大形獣の絶滅と人類」をあげています。
「縄文草創期の温暖期あるいは早期以降は堅果類のあく抜き処理容器として利用された痕跡が確認でき、煮炊きと並んでこれが縄文土器の主要な用途と考えられるが、出現の契機は別であろう。」

春成秀爾著「更新世末の大形獣の絶滅と人類」における縄文土器出現の契機に関する記述は次の通りです。
「考古学では,土器の出現を,弓矢・磨製石斧とあわせて後氷期における技術革新の一つとして取りあげてきた長い歴史がある。すなわち,気候の温暖化,完新世の始まりと土器・弓矢・磨製石斧の出現を結びつけて,これらは完新世の新しい環境に適応するための技術革新であり生活革命であると理解し,縄文時代の始まりの意味を追究してきた。考古学・古植物学の新たな展開があってもなお,年代をさかのぼらせることによって,これまでの理解を基本的によしとするのか,それとも東日本のばあいはむしろ,寒冷気候下での自然資源の変貌に対応するための発明であったと考えなおすのか,新たな観点からの再検討を迫られている。」(太字は引用者)

関連する掲載図表
春成秀爾著「更新世末の大形獣の絶滅と人類」(国立歴史民俗博物館研究報告 第90集 2001年3月)から引用

著者は寒冷化が進んで2万年前頃には本州の東ではナウマンゾウなどの大型狩猟獣が姿を消し、旧石器時代人は新たな食糧資源開発を迫られたと述べています。その寒冷期食料資源開発の一環として土器発明もあるのではないかと述べていることになります。

氷期のさらにクライマックス期に土器が発明された理由としてとても分かりやすいものになっています。

3 論文の本旨
論文の本旨は、本州におけるナウマンゾウなどの絶滅の主要な理由は人によるオーバーキルではなく、植生変化によるものであるという点にあります。

更新世後期から完新世にかけての動物の編年的分布
春成秀爾著「更新世末の大形獣の絶滅と人類」(国立歴史民俗博物館研究報告 第90集 2001年3月)から引用

この論文はシンポジウムの資料に手を入れたものだそうで、読んでいると著者がしゃべっている様子が目に浮かんでくるような錯覚を覚えるようなとても読みやすい読み物です。
更新世後期から完新世にかけての大型動物絶滅の様子がよくわかります。
古生物学と考古学の橋渡しがこの論文で行われています。

0 件のコメント:

コメントを投稿