2020年4月11日土曜日

草創期フェイズ1の私的学習仮説のバージョンアップ

山田康弘著「縄文時代の歴史」(2019、講談社現代新書)学習 12

2020.03.29記事「草創期フェイズ1と私的学習仮説」の追補記事です。
数冊の図書を読み旧石器→縄文の移行期のイメージが少しだけですが豊かになりました。そこで草創期フェイズ1に関する私的学習仮説をバージョンアップします。
なおこのブログでの私的学習仮説とは、自分がこれから行う縄文社会消長分析学習で何が問題・課題であるか、つまり自分は何に興味を持つべきかという態度を整理するために設ける学習興味一覧みたいなものです。自分の学習をより効率化するための仮説です。

フェイズ1に関する私的学習仮説(バージョンアップ 2020.04.11)
1 寒冷化が促したヒトの土器発明
1-1 最寒冷期にヒトが生き残るために食糧資源開発が活発化した。
最終氷期クライマックス期に入り寒冷化が一段と進み、ヒトという種が生き残るために食糧資源開発が喫緊の課題になったと考えます。
寒冷化の中で狩猟で獲った動物だけではヒト社会を維持できるだけの食糧を全部賄えない状況が生まれたと考えます。
古本州島では生き残りのためにヒトは次のような工夫をした(せざるをえなかった)と考えます。
ア 動物をより効率的に獲る工夫をする
イ これまで利用しなかった獲物部位や動植物をより効率的に食糧資源化する
・骨や皮・腱等の効率的食糧利用
・サケマスの食糧利用
・貝の食糧利用
・樹皮や根茎等の食糧利用

アに関しては当時のハイテク技術とでもいえる細石刃文化が古本州島に入ってきたことに対応していると考えます。石材を採集し持ち運ぶ手間が急減し、狩猟活動が効率化したと思います。
イに関して、多様な工夫がなされ、その一つに煮沸のための容器有用性が体験的に知られるようになり、土器発明の条件が整ったと考えます。
貝の利用は当時の海岸線が海抜マイナス100mにあり、遺跡遺物から検証することは現状では不可能です。しかし、当時の人が海岸線にも進出して食糧を調達したことは当然であると考えます。

1-2 土器の発明
・動物の骨や皮・腱等、サケマスや貝、樹皮や根茎当を調理して美味しく食べるために試行錯誤の末に土器が発明されたと考えます。
・土器は調理器具として発明されたのであり、即ち女性が発明したものです。

2 土器発明が定着場面増加を促す
土器が発明されサケマス、貝、樹皮や根茎等を効率的に食糧に取り込み、美味しく食べられるようになると、それらの食材は全てある季節に獲れるものであり(旬の食材)、その季節に一定の場所で定着することになります。
石器石材の持ち運びに苦労している狩猟民にとって土器はそれ以上に持ち運びに不便なものです。
土器の発明は最初からそれを使う場所での一定の定着生活を意味していたと考えます。
つまり、土器が発明され食材が多様になるとともに遊動生活に定着場面が増えたと考えます。

3 定着場面増加が遊動集団の領域占用を促す
遊動的狩猟をしつつも季節の旬の食材を特定場所で獲得する生活を繰り返しているうちに、集団ごとに領域占用が生まれたと考えます。
同時に集団ごとの交易も始まったと考えます。
集団は自分の領域にないものは交易によって入手できるようになります。

4 石器石材を交易で入手できるようになる
土器発明に起因する定着場面増加→遊動集団の領域占用→交易の活発化によって石器石材も入手できるようになったと考えます。
素材としての石材だけでなく、製品としての石器の流通も始まったと考えられます。
神子柴遺跡の大型石斧はこのような交易の様子を示しています。
細石刃のような石材の超節約をしなくて済む社会が生まれたのだと思います。
土器発明が引き金となって石器石材が交易ルートで入手できるようになると、細石刃文化は用済みになったと考えます。

5 土器発明が古本州島で生じた地形的背景
土器発明が古本州島で生じたと考えるとき、その背景として次のようなことが考えられると想定します。
ア 古本州島では海岸域(貝類)-河川中上流域(サケマス)-台地丘陵山地(陸獣)のセットが手ごろな「流域」として存在しています。その多様な自然環境を家族-集団が独占的に利用できます。したがって、貝類やサケマス資源開発が社会テーマとなった時に社会全集団がその開発に取り組むことができます。
イ 古本州島は地形が複雑であり大規模で効率的な陸獣猟が不可能であることから貝類やサケマス資源開発を促進せざるを得ない側面もあったと想定できます。
ウ 沿海州大陸では地形単位が大きく陸獣猟が効率的にできることからサケマス資源開発が遅れた可能性があります。その結果土器発明も遅れたと考えます。
エ 沿海州陸域面積に比して海岸線が短く、結氷の影響もあり貝類等海域資源開発は低調であったと想定します。海岸部利用の低調さが魚貝類資源開発の遅れになり、それが土器発明遅れに影響したと想定します。

ツタの新芽

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