「第四章 人口の増加と社会の安定化・社会複雑化の進展 前期・中期(Ⅲ期)」の「5 さまざまな墓制の展開」の小見出し「墓域、埋葬群、埋葬小群」「埋葬小群は何を表すか?」「小竹貝塚の墓域構造から前期の社会を考える」「抱石葬の理由」を学習します。
1 墓域、埋葬群、埋葬小群
・埋葬小群…墓群集して塊状
・埋葬群…埋葬小群の集まり
・墓域…埋葬群の分布域
2 埋葬小群は何を表すか?
・晩期愛知県保美貝塚の事例から埋葬小群には遺伝的な関係を有する小家族集団(3世代くらい)が埋葬されていて、一つの世帯を構成していると考える。
・前頭縫合(小変異)が通常ではありえない確率で出現していることから、埋葬小群が家族集団埋葬と考える。
埋葬小群の例
山田康弘著「縄文時代の歴史」(2019、講談社現代新書)から引用
・埋葬小群の中には、土坑墓が斬り合っているものがあり、わざと重複させることにより場所を共有し血縁関係者および祖霊との共存をはかり、埋葬を行った人々のつながりを再確認・強化する意図があった。
斬り合いのある土坑
山田康弘著「縄文時代の歴史」(2019、講談社現代新書)から引用
3 小竹貝塚の墓域構造から前期の社会を考える
・縄文前期富山県小竹貝塚出土人骨の食性分析で外部からの男婚入者…堅果類に偏り特殊な小臼歯咬耗男人骨(山間部からの婚入者)
小竹貝塚人骨の食性分析結果
山田康弘著「縄文時代の歴史」(2019、講談社現代新書)から引用
・仙台湾抜歯(上顎側切歯抜歯)の可能性のある男人骨
・埋葬姿勢が袋に入れられた可能性のある男人骨
・潜水漁労(外耳道骨腫)(三陸仙台湾)の可能性のある男人骨
・以上から小竹貝塚人集団は男性が婚入してくるような社会構造。
・妻方居住婚制で母系的社会。
小竹貝塚に仙台湾からの婚入者がいた可能性
4 抱石葬の理由
・外来者や他集団からの婚入者が抱石葬の主たる対象と思われる。
・「何らかの理由」のある外来者に対する呪術葬法。
5 感想
小竹貝塚の男性婚入者2人の出身地想定に仙台湾及び三陸が含まれていることに驚きます。太平洋岸貝塚から直線距離370㎞離れた日本海側貝塚に婿入りがなされているのです。
この図書を読んでいて、当初は、男性「婚入者」出身地イメージは対面交易関係範囲内でせいぜい数10km程度と考えていました。ところが370㎞離れているので、いくら想定とはいえ、驚きます。
この男性「婚入者」想定が一般的な事象であるならば、つぎの地域間でも婚姻関係が生まれていた可能性があります。
仙台湾貝塚と東京湾貝塚の間
東京湾貝塚と小竹貝塚の間
東京湾貝塚と伊勢湾貝塚の間
伊勢湾貝塚と小竹貝塚の間
加曽利貝塚では遠隔地との交流を示す資料として東北地方の土器(大洞式)が出土展示されています。この交流には実は男性婚入者の存在が含まれていると考えることが大切であるのかもしれません。
単なる情報交換、物資交易としての交流ではなく、東北から男性が婚入していると考えると、自分の房総遺跡出土物に対する見方がまるで違ってきます。鋭く出土遺物を観察して、婚入外来者をあぶりだしたくなります。縄文学習がますます面白くなってきました。
0 件のコメント:
コメントを投稿