「第四章 人口の増加と社会の安定化・社会複雑化の進展 前期・中期(Ⅲ期)」の「6 精神文化の高揚」を学習します。
1 男と女からなる世界観の確立
・縄文時代遺物には男性性と女性性を象徴したものが多い。
・石棒を石棒を用いた祭祀の中には、性行為時の男性器のあり方、すなわち「勃起→性行為→射精→その後の萎縮」という一連の状態を擬似的に再現する、「摩擦→叩打→被熱→破壊」という動作が組み込まれていたと考えられる。
・土偶祭祀は前期からスタート。土偶出土総数は2万点で4万点存在するとしても全国平均で年間8点ほど製作された。
・土偶は妊娠した女性をかたどっている。
山田康弘著「縄文時代の歴史」(2019、講談社現代新書)から引用
・土偶と石棒は対をなしてセットで出土した事例は乏しく、それぞれ独立した祭祀体系を有していた可能性が高い。
・大型石棒と石皿、埋甕と石棒の組み合わせで生殖行為を表現。
葬送や住居の廃絶儀礼で模擬的・象徴的な生殖行為が演じられていたとして、このような祭祀の象徴的存在である大形石棒は、祖霊観念と結びついていたとしている(谷口2006)。
動物の交尾をうつした土器
山田康弘著「縄文時代の歴史」(2019、講談社現代新書)から引用
・縄文時代の人々の残した遺物そのものやその出土状況には、男性性と女性性、そしてその交合が強く表現されている。これは、…縄文人にとっては、世の中のものが大きく男と女に区別することができ、この二つが交わることによって新たな生命が誕生し、あるいは再生されると信じていたことを表している。
・男女の交わりが病気や怪我の快癒などヒトに命だけでなくあらゆる生命の復活・再生に対しても影響を与え、効果を発揮した。
・石棒や土偶による男女交合をモチーフとした祭祀で豊穣と再生産を促すと信じられていた。
2 屈葬の意義
・屈葬は縄文時代の人々の再生観念を表している。
・日常的に目に入る場所に墓域を設けている。
埋葬姿勢
山田康弘著「縄文時代の歴史」(2019、講談社現代新書)から引用
3 縄文の基本的死生観・「円環的死生観」
・土器棺墓や土器埋設遺構が縄文時代の円環的死生観を具現化している。
・土器を女性に身体(母胎)になぞらえている。
・「回帰・再生・循環」
4 生を産み出す女性の象徴としての土器
出産文土器
山田康弘著「縄文時代の歴史」(2019、講談社現代新書)から引用
出産風景をうつした土器
山田康弘著「縄文時代の歴史」(2019、講談社現代新書)から引用
・出産とは「回帰・再生・循環」の世界観を具体的に体感できる象徴的な事象。
・土器埋設遺構に埋納されたものはヒトだけでなく動物や木の実、黒曜石、石斧などがあり、より多くあってほしい、豊かな恵みをたくさんとることができるようにという祈りであり、祭祀があった。
・出産時母親死亡は「回帰・再生・循環」の環が絶たれる精神的危機であり、妊産婦の埋葬は特殊で、呪術的対応で思想的危機を乗り越えた。
5 古くから存在した「円環的死生観」
・後期旧石器時代の沖縄県港川人は縦に割けた大きな割れ目から見つかり、そこに意図的に入れられた可能性もあり、母胎内から再生するという死生観をもっていた可能性がある。
6 メモ
・学習を進めていくうえで「回帰・再生・循環」という死生観を遺物・遺構・遺跡から汲み取ってみたり、逆に投影してみたりすることが大切だと感じました。
・男女交合が生命復活再生・恵みの豊穣再生産に不可欠な祭祀モチーフであり、その演出道具が石棒と土偶であることを知りました。
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