ブログ「花見川流域を歩く」で縄文石器学習の手始めに石棒の観察記録3Dモデルを3点について記事にしました。
しかし、石棒に関する基礎知識がゼロであり、単に3Dモデルを掲載するだけでは価値の低い趣味活動になってしまいます。
そこで、泥縄式になりますが、石棒の基礎知識入手を目的に谷口康浩編「縄文人の石神 ~大型石棒にみる祭儀行為~」を入手してざっと目を通しました。
まだ精読していませんが、期待以上に歯ごたえのある「その分野専門知識へのアプローチ」ができましたのでメモしておきます。
1 谷口康浩編「縄文人の石神 ~大型石棒にみる祭儀行為~」の概要
谷口康浩編「縄文人の石神 ~大型石棒にみる祭儀行為~」(2012、六一書房)
目次
谷口 康浩 縄文人の石神 「行為」と「コンテクスト」による大形石棒の研究法
大工原 豊 大形石棒の製作遺跡と流通 北関東における火成岩製石棒の製作と流通を中心として
中島 啓治 コラム1:大形石棒の石材の観察・記載法
長田 友也 石棒観察から読み取れること
中島 将太 石棒にみられる痕跡について
鈴木 素行 大形石棒が埋まるまで 事例研究による「石棒」(鈴木2007)の改訂
山本 暉久 住居跡出土の大形石棒について とくに廃屋儀礼とのかかわりにおいて
川口 正幸 コラム2:東京都町田市忠生遺跡A地区出土の大形石棒
中村 耕作 大形石棒と縄文土器 異質な二者の対置と象徴操作
阿部 昭典 東北北部の大形石棒にみる地域間交流
中村 豊 中四国地域における大形石棒
加藤 元康 コラム3:縄文時代の男根形土製品
あとがき
春成秀爾国立歴史民俗博物館名誉教授の推薦文が期待感を高めたので、また谷口康浩編者が石棒研究でも有名らしいので、この図書を入手しました。直接どのサイトなり図書引用で見つけたのかは、石棒関連情報に接しすぎましたのでもう思い出せません。
2 谷口康浩「縄文人の石神 「行為」と「コンテクスト」による大形石棒の研究法」
最初の論文谷口康浩「縄文人の石神 「行為」と「コンテクスト」による大形石棒の研究法」はまことに格調高い論文です。考古学における石棒研究が狭い技術的観察に終始してしまっているのではないかという自分の疑問(無意識的反応・反発)を大きく押し返して圧倒していただきました。
この巻頭論文以外の全ての論文もとても読み応えありますので、順次精読して自分の血肉にしたいと思います。
3 中村耕作「大形石棒と縄文土器 異質な二者の対置と象徴操作」
多数論文の中で中村耕作「大形石棒と縄文土器 異質な二者の対置と象徴操作」に特に興味が引かれました。
石棒3Dモデルを作成した聖石遺跡が例の一つとして提示され、異形台付土器3Dモデルを作成した加曽利貝塚大型住居も検討のなかで登場しますので興味が深まります。
参考
ブログ花見川流域を歩く2020.05.04記事「石棒(茅野市聖石遺跡第4号住居址(SB04))外 観察記録3Dモデル」
ブログ花見川流域を歩く2020.03.27記事「加曽利貝塚出土異形台付土器の観察と検討」他多数記事
しかしそれ以上に異質な二者の対置、異質な二者の中性化志向・象徴操作という観察方法(観察概念)に大いなる魅力を感じます。
土器学習で「夫婦土器」と自分が勝手に名付けた2つの土器がペアで出土する状況もこの論文で論じられています。
異質な二者の対置、異質な二者の中性化志向・象徴操作はつぎのチャートにまとめられています。
象徴操作の3表現
中村耕作「大形石棒と縄文土器 異質な二者の対置と象徴操作」から引用
この論文の概念の素となるターナー「儀礼の過程」(1975、思索社)などの象徴人類学にも触手を伸ばしてみたいと思います。
土器型式AとB
土器形式AとB
石棒と土器
石棒と石皿・磨石
石棒AとB
これら異質な二者が出土した情報に接した時、意味があるかもしれという視点をもてて、この論文に感謝します。
早速別記事で加曽利貝塚大型住居の再検討を新しい視点から行い、楽しみたいと思います。
0 件のコメント:
コメントを投稿