2020年5月18日月曜日

北の大規模集落

山田康弘著「縄文時代の歴史」(2019、講談社現代新書)学習21

「第三章 本格的な定住生活の確立 早期(Ⅱ期)」の「2 定型的な居住様式の確立と貝塚の形成」の小見出し「北の大規模集落」「本州における様相」「集落から居住集団を推測する」を学習します。

1 北の大規模集落
「北海道八千代A遺跡からは早期前半の時期の竪穴式住居が103棟以上確認されたほか、9万点弱もの遺物が出土しており、全国的に見ても稀有な大規模な集落遺跡であることが判明している。また、北海道函館市の函館空港中野B遺跡は、津軽海峡を望む海岸の台地の上に広がる大規模な集落跡だが、そこから早期後半の事例を中心とする竪穴式住居跡が700棟以上、検出されている。住居跡の数だけをみれば、まさに縄文屈指の大集落である。」山田康弘著「縄文時代の歴史」(2019、講談社現代新書)から引用

2 本州の様相
「本州でも岩手県馬立Ⅰ遺跡から早期前半の住居跡が14棟、山形県二タ俣A遺跡では早期前半を主とする住居跡が18棟、群馬県多田山遺跡群では早期前葉の稲荷台式期を中心に住居跡が23棟見つかっている。」
「近畿地方でも、三重県鴻ノ木遺跡から早期前葉の住居跡が18棟確認されている。」
「中国地方でも、島根県堀田上遺跡や鳥取県取木遺跡の事例など、そのほとんどの集落が数棟程度の規模しかない。
「九州においても、その南部を除いては、竪穴式住居の検出例は少ない。」
「現状では、早期の段階においては、すでに通年的定住生活を行っていた地域と、そうでない地域があったと理解しておいた方がよいだろう。」
山田康弘著「縄文時代の歴史」(2019、講談社現代新書)から引用

3 集落から居住集団を推測する
1つの住居に何人が生活していたかは、
居住者数=(住居跡の床面積)÷3(人が手足を大きく伸ばしたときの広さ)-1
という式でおおよそわかる。

上野原遺跡では早期住居跡の平均床面積(約7.13平方メートル)から1棟に2~3人生活していたと推定できる。1時期に6~7棟住居があったとすれば、多くとも20人程度が集落人口である。
北海道中野B遺跡では平均床面積(約15.4平方メートル)から1棟に4~5人生活していて、1時期に6棟前後の住居が同人存在していたとされるので集落人口は30人前後と推定される。
集落は2~3家族程度の人々から構成されていたと推定できる。
以上山田康弘著「縄文時代の歴史」(2019、講談社現代新書)から引用

4 感想
これまでの学習結果と合わせると縄文早期定住に関して、山田康弘著「縄文時代の歴史」(2019、講談社現代新書)から次のような情報を読み取ることができます。
●貝塚が形成され本格的な定住生活が営まれていた地域…東京湾沿岸部、青森県赤御堂貝塚や長七谷地貝塚、岡山県黄島貝塚、滋賀県粟津湖底遺跡など
●早期の段階において通年的定住生活を行っている地域…九州南部の上野原遺跡付近、北海道の北海道八千代A遺跡周辺、函館空港中野B遺跡周辺など
●通年的定住生活を行っているとは考えられない地域…上記を除いた本州東北・関東・近畿・中国・九州北部など

以上の結果を地図にプロットすると次のようになります。

縄文早期大型集落と縄文早期貝塚

関東平野の縄文早期貝塚

図書に記述されていることを機械的に理解すると、九州南部と北海道及び関東の3カ所が縄文早期に定住化が全国に先駆けて進んだと考えることができます。
九州南部は列島で南に位置していて気候の温暖化が早かったという条件から定住化が早かったと理屈をつけることができます。
関東は海進の影響が顕著で漁労という有望な新たな生業を獲得できたので定住化が早かったと理屈をつけることができます。
北海道はなぜ定住化が早いのか?草創期以来の大陸からの影響が「資産」として残っていたからなのか?今一つ自分には理屈をつけることができません。

函館空港中野B遺跡については今後さらに検討を深めたいと思います。

(縄文時代の全国貝塚データを当方活動のために奈良文化財研究所から提供していただきました。感謝申し上げます。そのデータから早期に関わる遺跡を抽出してQGISでプロット図を作成しました。)


5 参考
5-1 上野原遺跡の位置

上野原遺跡の位置
webにおいて、鹿児島県立埋蔵文化財センター→埋蔵文化財情報データベース→埋蔵文化財全情報検索→遺跡分布地図検索(詳細版)→霧島市→上野原遺跡の操作で正確な遺跡位置図を入手できました。

5-2 函館空港中野B遺跡、北海道八千代B遺跡の位置

函館空港中野B遺跡の位置

北海道八千代B遺跡の位置
webで北海道オープンデータポータル→データカタログ→データセット検索→地図・GIS→埋蔵文化財包蔵地(GISデータ)【北海道】でデータをダウンロードして、QGISプロットして位置を確認できました。
webで北の遺跡案内→北の遺跡案内へ進む→地図から探す→(自治体別操作)で遺跡地図にたどり着けることもできます。

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