2020年5月4日月曜日

早期の環境

山田康弘著「縄文時代の歴史」(2019、講談社現代新書)学習18

「第三章 本格的な定住生活の確立 早期(Ⅱ期)」の「2 定型的な居住様式の確立と貝塚の形成」の「早期の環境」を学習します。

1 早期の環境 概要
・すでに温暖化が進行しつつあった。
・約11600年前に気温が突然7度ほど上昇し、完新世に突入した。
・早期当初海水面は現在より約40m低かった。
・7000年前にかけて海水面が急上昇し、現在に近い高さとなった。…沈線文系土器、条痕文系土器群(約7500年前)
・前期前葉には現在より約2.5m~3m高い位置に海水面が上昇した。

・温暖化は多様な陸上動植物相の変化をひきおこした。
・沿岸部は海進による海水域の拡大によって、入り組んだ岩礁帯や小規模な砂泥性の入り江など多様な海岸線を出現させた。
・これらの新しく出現した森林産資源と海産資源の開発によって、縄文文化は大きく発展していくことになった。

・完新世にはいってからも寒冷化があり気候的に不安定な時期があった。

・早期の古い遺跡ほど海水面下あるいは地下に没している可能性がある。…愛知県先苅貝塚、佐賀県東名遺跡。
・瀬戸内では海進が50㎝ほど。

2 感想
2-1 海水面高度の把握
この図書には次のような海水面高度が記述されています。
最終氷期…100mほど低い…7万年前から1万年前
草創期当初…50m以上低い…16500年前
早期当初…約40m低い…11500年前
前期前葉…約2.5m~3m高い…7000年前

文言だけから判断すると、海面高度はつぎのように模式的にとらえることができます。
最終氷期の最寒冷期に-100m
最寒冷期から草創期当初(16500年前)まで約50m上昇して-50m
草創期当初(16500年前)から早期当初(11500年前)まで約10m上昇して-40m
早期当初(11500年前)から前期前葉(7000年前)までに約40m上昇して+2.5m~3m
(従って、前期前葉→中期→後期→晩期は+2.5m~3mの高さから0mに至る海面低下期と捉えることができます。)

山田康弘著「縄文時代の歴史」(2019、講談社現代新書)記述海面高度の模式表現

この情報の裏付けとなるような原典資料を探してより正確に把握したいと思います。
草創期当初が現在より「50m以上低い」となっていて-50mと言っているわけではありません。そこいらの事情をくわしく知りたいと思います。

2-2 海水面高度に対応した陸域・海域分布様子の把握
海水高度が判明すれば、その時代の陸域・海域分布の大要を把握することができます。海域水深情報から単純に縄文各期の陸域・海域分布図を作成してみることにします。グローバルな地形情報を入手して列島規模でQGISを活用して取り組みます。

2-3 土地が狭くなることの環境影響
海進によりリアス式海岸が形成され多様な海岸環境が生まれ、縄文人による海産資源開発が進んだ様子を、温暖化の影響のなかで詳しく知りたいと思います。
同時に海進により陸域の面積が急減しています。この陸域面積急減が環境にどのような影響を与えたのか、縄文社会にどのような影響を与えたのか考察したいと思います。

素人単純に考えて、陸域面積が減れば、それだけ獣の数も減るのではないでしょうか?陸域面積が減っても縄文社会人口が減らなければ(逆に温暖化で堅果類をメジャーフードにして人口が増えれば)、獣の1人当たり収穫は少なくなります。獣の収穫減少を補うためには海産物資源化を加速する必要があります。→このような陸域急減の影響が他にも多々あると考えます。
陸域面積急減の影響についての専門的考察はいままで出会ったことがありません。
なお房総では、陸域面積拡大という逆現象が縄文後晩期の海退期にありました。土地が増え(干潟の陸化)それに伴い獣が増え、それに伴い狩猟が盛んになった様子は獣骨出土量の急増として確認できます。

2-4 陸域急減の環境影響検討の独立学習プロジェクト化
次の項目学習はこの図書学習と離れて、独立した学習プロジェクトとして取り組むことにします。(ブログ「花見川流域を歩く」における「縄文社会消長分析学習」で取り組みます。)
・海水面高度に関する専門情報の入手考察
・海面高度別陸域・海域分布図作成
・土地急減の環境影響考察

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