2020年5月26日火曜日

縄文早期の精神文化

山田康弘著「縄文時代の歴史」(2019、講談社現代新書)学習24

「第三章 本格的な定住生活の確立 早期(Ⅱ期)」の「4 墓制・祭祀・装身具等の発達に見る精神文化」を学習します。

「4 墓制・祭祀・装身具等の発達に見る精神文化」は次の小見出しで記述されています。
1 墓域・配石遺構の発達
2 動物祭祀の発達
3 赤色顔料の多用
4 仮面習俗の存在?
5 多様な装身具
6 土偶の増加
7 早期の社会構造
8 縄文文化の主要な要素の萌芽期としての早期
これら一つ一つについて興味があります。それぞれ徹底して学習したくなります。しかし、5月は第三章学習、6月は第四章学習、・・・と計画的学習進行を優先させ、まず縄文社会変動の大局観をこの学習で得ることを主目的とし、寄り道学習はあくまで許容できる範囲の寄り道にすることにします。
この記事では上記小見出し記述の概要を確認し、今後の学習の仕方をメモします。

1 墓域・配石遺構の発達
・大規模墓域確実視…鳥取県上福万遺跡(配石墓、土坑墓、墓域正立)
・熊本県瀬田裏遺跡…方形配石遺構(押型文土器の時期、胴部に孔のある壺形土器)

墓域・配石遺構については今後折に触れて徹底して学習することにします。
草創期と早期では墓についてどのように異なるのか?
上福万遺跡は「全国遺跡報告総覧」(奈良文化財研究所)から発掘調査報告書(2冊)をダウンロードしてざっと見ることができました。興味が湧きます。

2 動物祭祀の発達
・千葉県取掛西貝塚…動物供儀
2019.02.07記事「飛ノ台史跡公園博物館企画展「ここまでわかった!~1万年前の取掛西貝塚~」」などで企画展展示観覧をはじめ何度か興味をもち学習をしています。
過去の学習をさらに発展させたい思考がいろいろ浮かびます。
「動物供儀」という言葉ではなく、その活動のイメージをよりリアルに推測できるようにしたいと思います。

竪穴住居跡から動物供儀跡が出土していますが、動物供儀は上屋のある住居内で執行されたのか、それとも廃屋となり、上屋が取り払われた野外空間としての住居跡で執行されたのか?
上屋のある室内空間での動物供儀は、根拠はありませんが、考えられないと直感します。
室内空間では集落の全員がその式に参加できません。
またイノシシやシカの頭と体の分離は動物供儀の重要な項目として式途中に衆人環視の中で執行されたに違いありません。首を切った動物の中にはまだ生きているものが含まれていたに違いありません。
動物供儀が野外(竪穴住居跡)で執行されその後、ある程度急速に貝をかぶせたと想像します。

動物供儀に関する図書も数多くあるようですから学習テーマの一つにしたいと思います。

動物供儀跡の状況
船橋市飛ノ台史跡公園博物館企画展(2019年2月開催)パンフレットから引用

縄文早期遺跡に動物供儀跡が発見される意義も検討価値があります。草創期にも同じようなことがあり、ただ発見できないだけなのか、それとも草創期には少なく早期に盛行しだしたのか?

3 赤色顔料の多用
・旧石器時代の赤色顔料…北海度嶋木遺跡出土石皿(台石)付着ベンガラ、北海道柏台1遺跡…褐鉄鉱
・鹿児島県関山遺跡…入れ子状土器の小型土器内部にパイプ状ベンガラ(早期後葉)
・北海道東釧路貝塚…人骨の全身にベンガラ
・北海道垣ノ島B遺跡…土坑墓からベンガラ赤漆の漆工製品(9000年前)火災消失
・石川県三引遺跡…ベンガラ漆塗竪櫛(7200年前)

4 仮面習俗の存在?
・東名遺跡から木製仮面出土…仮面習俗…祖霊祭祀
・中期以降に土製仮面(土面)増加

東名遺跡出土 木製仮面
佐賀市教育委員会編「縄文の奇跡! 東名遺跡」(2018、雄山閣)から引用

仮面習俗も大変興味がありますから、重要な学習テーマとしたいと思います。
2020.03.20記事「国宝土偶「仮面の女神」注記付き3Dモデルと想像的解釈

5 多様な装身具
・東名遺跡…シカ角加工装身具(腰飾り)、ツキノワグマ犬歯製垂れ飾り、サメ歯製垂れ飾り、貝製装身具(クマサルボウ製、マツバガイ製、ベンケイガイ製、オオツタノハ製)
・滋賀県石山貝塚…子ども埋葬例に伴うツノガイ製玉
・千葉県取掛西貝塚…ツノガイ製玉
・愛媛県上黒岩岩陰遺跡…タカラガイ製装身具、マキガイ製ビーズ

東名遺跡出土装身具
佐賀市教育委員会編「縄文の奇跡! 東名遺跡」(2018、雄山閣)から引用

千葉県取掛西貝塚出土 ツノガイ製玉
船橋市教育委員会発行「ふなばしの遺跡」(2017)から引用

6 土偶の増加
・千葉県木の根遺跡…三角形に大きな乳房
・茨城県花輪台貝塚…大きな乳房
・大阪府神並遺跡…四角い粘土版に乳房貼り付け
・鹿児島県上野原遺跡…顔の表現はない
・千葉県中鹿子第2遺跡…腰部だけで乳房はない
・千葉県打越岱遺跡…頭部から腰で乳房はない
・土偶の多元的発生説

茨城県花輪台貝塚出土土偶
山田康弘著「縄文時代の歴史」(2019、講談社現代新書)から引用

土偶についてはすでに重要学習テーマとして興味を持っています。土偶は時期によりその意義が微妙に(あるいはかなり)異なるようだとの作業仮説の下に学習を進めたいと思います。

7 早期の社会構造
・母系的な社会の可能性

8 縄文文化の主要な要素の萌芽期としての早期
・早期は縄文文化の萌芽期で、要素はすべて前期にまで持ち込まれる。

9 感想
縄文早期になぜ縄文文化の諸要素の萌芽が生まれたのか、なぜそれが前期に持ち込まれたのか、その理由(背景)をより深く理解できるように今後学習することにします。
縄文早期初頭は海面が現在より40m低く、縄文早期末までに海面が40m上昇しました。この地形の大変化(現代風に言えば国土の大縮小)と縄文早期文化とはどのように絡むのか、学習を深めたいと思います。

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