2020年3月25日水曜日

土器の発明がもたらしたもの

山田康弘著「縄文時代の歴史」(2019、講談社現代新書)学習 8

「第二章 土器使用のはじまり 草創期(Ⅰ期)」の「1 土器の発明がもたらしたもの」の前半部分を学習しました。

1 「土器の発明がもたらしたもの」要約
要約
・大平山元Ⅰ遺跡から出土した土器には煮炊きの時についたと思われる煤や「おこげ」が付着している。日本列島域において土器は当初から煮沸具、平たく言うと「鍋」として登場したと推定できるだろう。
・土器が登場し、内容物を長時間、煮込むことができるようになったことで、縄文時代の人々は旧石器時代と比較して、より多くの食料資源を利用することが可能になった。
・焼く、蒸すは従来の調理方法ではできなかった、動物のスジや頰肉など硬い肉、草菜の植物繊維なども煮込むことによって、やわらかく食べることができるようになった。
・熱をしっかり加えると、アルカロイド類など人体に有害な物質を除去することも可能になるので、トチやドングリ類も食料資源として利用できるようになった。貝類や魚類を土器で煮ただろうし、獣骨を煮て骨髄からスープを取り出したりもしただろう。
・煮込むことによって食材を組み合わせた煮込み料理、鍋・スープ・シチュー類をつくることができるようになった。
・肉類や魚類、貝類、草菜類、デンプン質といった複数の食材、調味料としての塩などを組み合わせていくつもの好みの「味」をつくり出すことができた。
・土器の登場は、新たな食料資源の開発・量的拡大を果たしたばかりではなく、嗜好の多様化をも導いた。

・土器は調理場面以外に、植物の繊維をやわらかくする、アスファルトを溶かす、ウルシの精製などで使われた。
・数々の染料や顔料も、焼成・煮沸してつくられた。

青森県大平山元Ⅰ遺跡出土土器
山田康弘著「縄文時代の歴史」(2019、講談社現代新書)から引用

2 感想
・ここで記述されているのは「縄文時代の歴史」のなかで土器用途を展望した時の記述です。それはよく理解できました。
・最初の土器は「縄文時代」とは全く無関係の最終氷期クライマックス期に後期旧石器時代人によって発明されました。後期旧石器時代人をして「土器の発明をもたらさしめたもの」がなんであるか、思考してみました。

3 土器の発明をもたらさしめたもの
後期旧石器時代人の生業の発展の中で土器の発明を捉えることが思考上すなおであると考えます。
そういう意味で「谷口康浩(2005):極東における土器出現の年代と初期の用途」に記述されている次の仮説は価値が大きなものであると感じました。
・極東地域(アムール川流域-古北海道半島-古本州島)で後期旧石器時代人が漁労を行い、その活動のなかで土器を発明し利用した。魚油抽出など。
・サケマスの南下と北方系細石刃石器群分布伸長との間には密接な関係がある。
・後期旧石器時代に古本州島でもサケマス漁がおこなわれて、それとの関係で土器が使われた。

最終氷期クライマックス期に土器が出土している様子
谷口康浩(2005):極東における土器出現の年代と初期の用途 から引用・塗色

一言でいえば、アムール川流域で生まれた細石刃石器群文化における漁労活動で土器が発明され、サケマスの南下(=冷涼化)に伴って人々は古北海道半島や古本州島までやってきた。結果として細石刃石器群文化と土器が列島にもたらされたという仮説です。
後期旧石器時代人の生業から土器が生まれたという仮説であり論理上首肯しやすい仮説です。
この仮説が正しいとすると、その後の温暖化時代を生きた縄文人は土器という超巨大資産価値をもたらしたアムール川流域後期旧石器時代人に大いに感謝すべきであることになります。

「土器の発明がもたらしたもの」とは「アムール川流域後期旧石器時代人が生業の中で発明した土器が古北海道半島や古本州島にもたらされ、その結果後日、列島縄文文化に沢山の幸福がうまれた」とでもいいかえることができます。
縄文人が縄文土器を発明したというストーリーは筋悪です。
縄文人は祖先である後期旧石器時代人がもたらした土器という資産を最大限有効活用した有能人であると考えます。

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