2020年3月27日金曜日

土器は女性がつくったのか?

山田康弘著「縄文時代の歴史」(2019、講談社現代新書)学習 9

「第二章 土器使用のはじまり 草創期(Ⅰ期)」の「1 土器の発明がもたらしたもの」の中の小見出し「土器は女性がつくったのか?」を学習します。

1 「土器は女性がつくったのか?」全文
世界各地の民族事例をみると、生活をしていく上で必要な作業が男性と女性とでは異なる場合が多い。このような作業のあり方を性別分業と呼ぶが、土器に関しては、ほとんどの場合、製作しているのは女性である。このことから類推して、縄文時代にも性別分業が存在し、土器の整形は女性が行っていたとされることがある。おそらくこの見通しは正しいだろう。ただし、土器の製作工程すべてを一人の女性が担っていたと考える必要はない。大型の土器の製作には複数の女性が関わったと思われるし、粘土素地の入手や土器の焼成などは男性が担っていた可能性も視野に入れてよいだろう。」山田康弘著「縄文時代の歴史」(2019、講談社現代新書)から引用

2 感想
2-1 土器について
縄文土器は女性が作っていたという説はどこかで聞いたことがあり、そうかもしれないとは考えていました。
しかし、もう一度、自分がどのように考えていたか、考えてみました。
よくよく自問すると、例えば次のように、土器は男性が作っていたと無意識のうちに考えていました。

加曽利EⅡ式土器
2019.03.08記事「加曽利EⅡ式円文楕円形区画文土器の観察
人口急増期の煮沸用鍋機能がそのままデザインされたように感じる土器
私の無意識のつぶやき「社会発展期の進取に富んだ雰囲気のなかで合理的な思考が芽生え、それが土器器形に反映した。その社会でドングリの共同採集や共同アク抜きを組織しているリーダー達(男性)が率先して作った土器だろう。」

獣面把手(?)付加曽利EⅣ式土器
2020.03.25記事「獣面把手(?)付加曽利EⅣ式土器
後期称名寺式期の土器であり、社会が大きく零落したと考えられる時期につくられ土器
私の無意識のつぶやき「鍋としての使い勝手などは全く無視して、巨大な把手をつけている。大把手は蛇頭の形となっていて明らかに男性シンボルを連想させる仕組みとなっている。困難な生活の中で貧しい食材を少しでも美味しく食べるために繁栄の象徴(獣面把手)を(男性作者が)土器につけたに違いない。」

縄文土器とは男性が作っていたと自分は考えることになります。おそらく現代工業社会(男性社会)の様子から縄文社会を眺めているのだと思います。

縄文土器は女性が作っていたという仮説を受け入れるならば、自分の無意識発想は完全に変革しなければなりません。自分にとってはコペルニクス的転回になります。
縄文土器は女性が作っていたと考えるならば、土器作成はつぎのように考えることになります。

●加曽利EⅡ式土器
社会組織が整備され女性たちによるドングリの共同採取や共同アク抜きが進み、効率的かつ大量に食物を蓄えることができるようになった。その効率的作業に適した器形の土器を女性達は好んでつくった。

●獣面把手(?)付加曽利EⅣ式土器
食事でひもじい思いをするけれでも、少しでも美味しくたべるために、女性達は土器(鍋)だけでも豪華に作りたいと考えた。女性達は繁栄の象徴である男性性(男性器)や女性性(女性器)、あるいは男女交合の様子を文様化して土器に表現した。

参考 男女交合を描いた土器
2020.01.05記事「縄文中期中葉深鉢形土器(飯田市大明神原遺跡)の模様観察

2-2 作業仮説としての縄文土器女性作成説
縄文時代学習を深めるために、これからは縄文土器は女性がつくったという作業仮説を設定して、それに基づいて意識して思考することにします。
妊娠、出産、子育てが人生の主要任務である縄文人女性にとって、土器づくりはそれらの仕事と両立するという特性があります。移動生活におけるキャンプで、定住生活における集落で土器づくりはできます。
土器づくりは大移動や強力なエネルギーを必要としません。
また土器づくりは調理の道具づくりであり、調理が女性の仕事であるとするならば、土器づくりを女性がしていたということと平仄があうような気がします。

2-3 土偶
土器づくりは女性の仕事であると考えると、土器づくりの合間に副産物として作った土偶も女性が作った、女性が使うモノであるということになります。
土偶がいわば女性専用であると考えると出土物の理解が進みます。

バイオリン型土偶
2019.04.27記事「バイオリン型土偶の3Dモデル観察
豊な乳房だけが表現されているといってよいと思います。
せっかく妊娠、出産しても母乳がでなければ乳児が死んでしまい、すべてが水の泡です。
母乳が豊かに出て、子供を死なさないで育てたいという祈願にかかる製品だと思います。

国宝土偶仮面の女神
2020.03.20記事「国宝土偶「仮面の女神」注記付き3Dモデルと想像的解釈
成女式=成人式=集団見合いの様子を描いた土偶で、娘が結婚するまで(生殖活動ができるまで)育つことを母親が祈願している人形であると想像します。

人面付土版
2020.02.05記事「人面付土版 観察記録3Dモデル
口の回りに粘土紐に刻みをつけて髭がついています。
千葉市ホームページでも次のように説明しています。
「全体の3分の1が人面の部分になっており、粘土紐を貼りつけ、刻みを施し、髭と眉を表現しています。眉の下に沈線で輪郭をとって中央を刺突して目を入れ、顔の両脇には耳もあります。頭部の裏面には頭髪と思われる粘土紐の貼り付けに刻み目をいれた表現が見えます。」https://www.city.chiba.jp/kyoiku/shogaigakushu/bunkazai/uchinodaiichidoban.html
私はこの髭からこの土版は男性を表現していると考えました。長野県出土人面付土版では女性器のあるものもあり、男性表現と女性表現が混在しているような気がしていました。
しかし、土偶が女性専用のモノであるとわかると、この髭の意味が氷解しました。
アイヌの女性は口の回りに髭の入れ墨をします。

アイヌ女性の入れ墨
その入れ墨として顔につけられた髭をこの土版は表現しているのです。
この土版は女性のお守りであると想像します。

縄文時代の女性がアイヌと同じように口の回りに入れ墨をしていた証拠がこの土版です。千葉市埋蔵文化財調査センターが縄文時代女性が入れ墨をしていたという大発見をしていたことを、今さらですが、知りました。千葉市埋蔵文化財調査センターはすごいです。

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